美人時計成功の裏側
2009年にブレイクした『美人時計』の創業者及び"育ての親"による企業から離陸までを綴った一冊。
前半は創業者の中屋氏、後半は育ての親橋本氏による。文体がそれぞれのキャラクターを反映していて面白い。
さて、美人時計は個人的に2009年にもっとも成功したウェブサービスとみなしてるのだけど、開始から苦難の連続だったようだ。
一見美人の写真を次々表示させるだけの安易な誰にでも思いつくようなサービスに見えるかもしれないが、その見せ方や広め方などにトコトン煮詰めた上のサービス展開だったと分かる。たとえば、時計として見せるボードをどうするか、無地のボードに上から時計を表示するのか?ポーズはどうするのか?写真はどのようにそろえるのか?試行錯誤の上手書きのボードを持った4ポーズの写真に落ち着き、それがその後の標準フォーマットに至る等創業時のエピソードに事欠かない。そして、開始後の運営はまさに綱渡りの連続だったようだ。
ブレイクする一方、爆発するアクセスによるサーバ負荷に加え、スクレイピングや模倣者に苦慮したことも伺える(当時月額数百円のレンタルサーバを使用し、追い出される度に新しいサーバに乗り換えるようなことをしてたらしい)。
当時、美人時計の画像を利用しようとしたギーク連との軋轢なども記憶に新しいところ。話題になった広報担当東條氏の名前も登場する。
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橋本氏によると、この頃は体制的にも法務的にも全くなっていなかった状態で、どこから手をつけるか頭を抱えたらしい。
そういえば当時TumblrのDashboardのしおり代わりに美人時計の画像を使っていたけど、いつの間にやら拒否されるようになったなあ…(笑)
美人時計でもっとも感心したのはマクドナルドとのタイアップ広告で企業名を明示しないで話題生成に成功した事例として強く印象に残っている。もちろん、本書にはその時の裏話もばっちり載っている。で、見事乗せられたなあと。
その他海外展開や地方展開について等もどういう目論見でタイアップを行っていったのか、軽い文体ながら力強い考えが記述されている。
iGoogleをホームページにしなくなって以降美人時計を目にすることもなくなり、また、バイアウトを機に株式会社美人時計への関心もなくなった自分だが、当時を懐かしみながら面白く読むことが出来た。読み物としても面白いし、今後起業を考えている人には色々得るものがあるのではないでしょうか。
hReview by tomozo , 2012/04/12
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