週刊誌ジャーナリズムへのエール
週刊現代の元編集長で、オーマイニュースの編集長・社長を経て現在は編集者の学校」を各地で開催したりJ-CastやマガジンXなどに連載を持つ元木昌彦氏による、週刊誌の歴史・問題点などを綴った新書。
まずは、上智大学で開催された週刊誌サミットの紹介から始まる。
Business Media 誠:集中連載・週刊誌サミット:編集長は度胸がない+愛情がない……週刊誌が凋落した理由(前編) (1/3)発行部数の減少、名誉棄損訴訟、休刊……雑誌を取り巻く環境はますます厳しくなっている。そんな状況を打破しようと、“週刊誌サミット”が5月15日、東京・四谷の上智大学で開催された。第1部の座談会に登壇した、田原総一朗氏や佐野眞一氏らは何を訴えたのだろうか?
週刊新潮の大誤報を取り上げて、週刊誌を取り巻く状況…とくに個人情報保護法などのメディア規制と高額賠償の問題や、ネットの隆盛から週刊誌の凋落について歴史的経緯を交えながら当事者としての言葉を紡いでいる。
週刊誌の状況を嘆くだけでなく、問題点やその対策などについても具体的に述べており、中々に説得力のある一冊と言える。
個人的には、匿名情報をつなげ併せて記事を作り上げる週刊誌はあまり好きではないのだが、新聞から政治を揺るがすスキャンダルなど出てくることがないことを思うと、週刊誌ジャーナリズムにはこれからも頑張ってもらいたいと思う。
ところで、本書が気になったのはプロブロガーの佐々木氏のエントリーがきっかけだ。
記者クラブを楯にして新聞を有料化しようと企てる人たち:佐々木俊尚 ジャーナリストの視点 - CNET Japanさて再び冒頭に紹介した元木氏の話に戻ろう。なんと驚くべきことにこの人は、記者クラブによる情報独占を楯にして、談合によってこの有料化戦略を成功させればいい、と主張しているのである。
本書と通じて読んでみると分かるのだが、元木氏は週刊誌ジャーナリズムを新聞系ジャーナリズムと対比する存在として位置づけ、権力と談合を繰り返す新聞・テレビメディアへの批判、対抗意識を繰り返し表明している。にも関わらず、上記のような感想が出てくるとは…
こんなバカげた話を書いている元新聞記者が、日本のネット業界では「メディアのことがよくわかっていて、われわれの行き先を指し示すことができる数少ない人」として尊敬されているのである。だから日本のブロゴスフィアは絶望的なのだ。
hReview by tomozo , 2009/11/24
- 週刊誌は死なず (朝日新書)
- 朝日新聞出版 2009-08-07
それにしても、週刊誌やテレビのネタをまとめただけのものがはてなブックマークでホットエントリーに入ったり、既存メディアで既出のネタを随分とおくれて話題にするtwitter等を見るとついつい片頬上げて笑ってしまいますよね。