結論から言うと、非常に面白く、また同時に蒙が啓ける内容だった。
本書は音楽産業が産業として立ち上がった時期から始まる。驚いたことにその時には既に今でいうタイアップが始まっていたという。タイアップというと80〜90年代辺りと思いこんでいた俺には既に驚きだった。テレビに出ない歌手についても迎合しない、と言うポリシーだと思いこんでいたが、ラジオ・テレビの競合があったとは思いもよりませんでした。この本の面白いところは、人によっては風俗史だったり、メディア史だったりと音楽とタイアップというフィルターを通して様々なものが浮かび上がる点だ。個人的には時代を経る毎に洗練されていくその手法に舌を巻いた。
凡人にありがちなことだけども俺はタイアップというのは"広告代理店がレコード会社と組んでウッシッシ"と言うタイアップは悪いよ史観を持っていたのですが、その裏側では御大といえどもダメ出しを食らう厳しい世界があってこそのヒットだったと知って更に驚き。特に"ラブ・ストーリーは突然に"の詞にあんな意味が潜んでいたなんて。 読後、浅薄な史観はあっさりと覆されてしまいました。
満足度は高いが、不満がないわけではない。
全体に事実を淡々と記述している感が強く、ブログで見られる五反田節(と勝手に俺が呼んでいる氏独特の文章のリズム)が影を潜めている点。例えばコラムという形で納められなかっただろうか。せめて川嶋あいについては。。また、膨大な資料を一冊に押し込めているため、どうしても一つ一つのエピソードが圧縮されている感が否めない。
出来うることなら、いつか"タイアップの物語"と言う形で15巻ぐらいでDVD付きで出してくれないだろうか。
不思議なのは多くのブログで取り上げられているにもかかわらず、未だにAmazon.co.jpのレビューがないこと。何でだろう?
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