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瀬名秀明

第九の日

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第九の日 The Tragedy of Joy
瀬名 秀明
光文社 2006-06-21
評価

by G-Tools , 2006/09/18

瀬名秀明氏による『ケンイチくんシリーズ』の第2弾。前作『デカルトの密室』の前のエピソードとなる"メンツェルのチェスプレイヤー"の他、"モノー博士の島"、"第九の日","決闘"の4篇からなる中短編集となる。

読書好きの人ならピンときたかもしれないけど、ポォ、ウェルズ、クィーンへのオマージュとなっている。正直言うと、クィーンに関してはBK1の説明読むまで気がつかなかったけど。

本書も『デカルトの密室』と同様、"知性"や"意識"とは何か?と言うテーマが根底に流れており、そう言った事柄に関して知的好奇心が無い人には少々取っつきにくいかもしれない。特に、『第九の日』にはそれにキリスト教まで加わるから尚更。
そう言えば、いっとき瀬名氏のブログでやたらC・S・ルイス(ナルニア国物語の作者)が取り上げられていたが、本書を読めばそういう事だったのかと言うのが分かる。
また、現代テクノロジーのちょっと先のテクノロジーを取り扱っておりで、例えば、『決闘』ではBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)が取り上げられている。そう言った意味でSFと現代小説の境界辺りに位置しているのかな、と思う。

『第九の日』は終わり方がちょっと救いが無い感じで、これで終わっていたらちょっと読後感がよろしくなかったが、『決闘』で救済された感じ。個人的には『決闘』が一番好きな一遍。ちょっとそれまでとは毛色が違うけども。

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瀬名 秀明

新潮社 2005-08-30
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by G-Tools
知性とは何か?意識とは何か?

と言うわけで、瀬名秀明氏によるロボットをテーマにした著作3作目を読み終えた。AmazonやBK1のレビューを読む限り、「難解」と言うのがこの本の一般的な評のようだ。アラン・チューリング、チューリングテスト、フレーム問題、不気味の谷等と言う言葉を理解できないと、作中に入っていくのは難しいかもしれない。もちろん作中で説明はなされているが、それだけで理解できるものではないだろうし。

現代のロボット開発における諸問題についてある程度理解していれば、本書のテーマや内容はさほど難しいものではないと思う。逆に言えば、それらを説明するのにチューリングやデカルトが用いられているともいえるのかな。

主人公が作家、そして作品中において物語ると言う行為が挿入されている構造は、「八月の博物館」を彷彿とさせる。瀬名氏はこの手法がお気に入りなのかしらん。

作中、iBotSETI@home等のテクノロジーが頻繁に出てくるのはニヤリとさせられた。その延長で「ケンイチ」にも妙なリアリティを感じた。ちなみに、勝手に映画"ヒノキオ"に出てくるロボットをイメージしたのだけど、実際はどうだろう?
俺としては興味深い内容だったし、面白いと思った。ただ、最後の対決の場面はあまりにも唐突な感じがした。

なお、本作の前のエピソードは、e-novelsで購入可能。

メンツェルのチェスプレイヤー
そして、瀬名氏のブログによると、「ケンイチくんシリーズ」の三作目が6月に刊行されるそうだ。
瀬名NEWS: ケンイチくんシリーズ最新作
ゲラ到着。
順調にいけば、6月下旬刊行。

蛇足だけど、追記部分に参考になるものを挙げておく。ちなみに俺も全部読んでるわけじゃないよ。

【追記】

こんなページがありました。さすが瀬名氏。(追記部分の参考文献は削除しました)

参考サイト 新潮社 - デカルトの密室

企画展示室『デカルトの密室』-瀬名秀明の博物館

続きを読む

科学の最前線で研究者は何を見ているのか

stars

ええと、とっても難しゅうございました。

"あしたのロボット"で知られる瀬名秀明氏と科学者の対談なのだが、化石とかロボットの話はなんとか付いていけるものの、量子論とか、宇宙論とか、素粒子とか、その辺りになるともう文字を追っても理解は出来ませんでした。世界は面白いなあ。
それぞれの章で、難易度による差はあるものの、非常に興味深い対談が行われている。少し空恐ろしく思ったのは、科学の先端と書いてエッジと現実生活の乖離。なんか、生活者として実感を持てなくて。

心に残ったのは第2部 第6回 人はなぜ「あんなこと」を信じてしまうのか(菊池聡)

その中で出てきた"クリティカル・シンキング"と言う言葉。日本語に訳すと"批判的思考"と言う事だが、決してケチをつけると言う事ではなく、多角的に物事を捉え、正しく因果を把握すると言う思考法の事。リサーチ・リテラシーもそうだが、一見もっともらしい論理でも、突き詰めると単なる偶然の作用であったり、裏に何らかの意図があって導かれたり、と言う事がある。
マスコミでも、ネットでも短絡的な詭弁や強弁が跋扈している現在、このような思考法は非常に大切なのではないだろうか。

hReview by tomozo , 2005/09/18

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科学の最前線で研究者は何を見ているのか
瀬名 秀明
日本経済新聞社 2004-07

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瀬名 秀明
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評価

by G-Tools , 2006/11/20

まず、分厚い。電車の中で読むには適さない圧倒的なテキスト。結構速読派な俺も読むのに結構時間がかかってしまった。

内容は、瀬名秀明氏による古今東西の"ロボット"に関する物語と、それと交錯するロボット工学、人工知能研究等についてまとめたアンソロジー。取り上げられているロボット小説ももちろんのこと、その合間にある第一線の研究者、或いはリアルロボットアニメの製作者等のコラムも面白い。

1930年代までを区切りとし、ロボットの前身ともいえる神話におけるゴーレム、フランケンシュタインの怪物、自動人形と書いてオートマタ、からくり人形等の話題を取り上げ、カレル・チャペックが"R.U.R"において"ロボット"と言う言葉を創作、アシモフからアトム、サイバーパンク、リアルロボットまで様々なロボットを取り巻く物語が取り上げられる。同時に、当時のロボット工学や人工知能研究までロボット関連する技術・学術的な取り組みを取り上げ、それらが相互にどの様な影響を与えたか、についても言及。

例えば、ホンダが"アトムを作れ!"と言う言葉の元にASIMOを開発したことは広く知られているエピソードだと思うが、他にもroombaで知られるiRobot社の創業者が"R2D2"を作ろうと思っていたり、産業用ロボットのパイオニア"unimation"社の創業者が映画"禁断の惑星"に登場する"ロビィ"をみて、ロボットを作ろうと思い立ったとか、"物語"と"テクノロジー"が相互に影響を与えていることが読み取れる。まあ、必ずしも良い影響ばかりではなく、例えば"フランケンシュタインコンプレックス"の様に、テクノロジーに対する恐怖を植え付けたりもするのだが。

ロボット工学を学ぶ人には常識的なことかもしれないけど、単なるロボット好きにはこのロボット工学の辿った道をなぞるだけでも面白かった。

収録されている作品のうち、心に残ったのは以下の通り。

  • 孤独な機械(1932)ジョン・ベイノン・ハリス(ジョン・ウィンダム) 金子浩=訳
  • フロストとベータ(1966)ロジャー・ゼラズニイ 浅倉久志=訳
  • コスモノートリス(2002)藤崎慎吾

しかし、アトム、ガンダムの影響を論じるのは多いが、"パトレーバー"と"攻殻機動隊"の影響も大したもの。10年後ぐらいには"エヴァ"に影響を受けたロボット技術者が出てくるのだろうか?

それにしても読後は"まるいち的風景"が読みたくて仕方がなくなってしまった。。。

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