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日本の偽書 (文春新書)
藤原 明
文藝春秋 2004-05
評価

by G-Tools , 2007/06/03

端的に言って面白かった。古代史の専門家からは批判もあるようだが。内容はと言えば、Amazon.co.jpからの引用で。
“記紀以前の書”といった荒唐無稽な偽書のたぐいには、意外にも正史には見られぬような精彩のある歴史像が描かれている。超国家主義者と深くかかわる『上記』『竹内文献』、東北幻想が生んだ『東日流外三郡誌』『秀真伝』など、本書では世間を騒がせた「太古文献」と呼ばれる偽書を取り上げ、ただあげつらうのではなく、どのようなメカニズムで人々の興奮を掻き立てて来たのかを検証し、人はなぜ偽書に魅せられるのか、その謎を詳細にさぐる。
単純に偽書を偽書として説明するのみならず、偽書が成立した経緯、それが世に受け入れられる課程を説明しているところが面白い。特に興味をひかれたのは『竹内文献』を巡る第2章。俺が子供頃読んだ本にも「キリストの墓」や東北とユダヤの関わりについて書かれていていつか見に行こうと思っていたわけだが、これが見事に偽史だったとは…!

また、偽書というのは近代の産物だと思っていたが、古くからあるものだなあ、と第三章「記紀」の前史を名のる偽書―『先代旧事本紀』と『先代旧事本紀大成経』(本邦初の史書は『先代旧事本紀』?『古事記』をしのぐ影響力 ほか)を読んで驚いた。

そう言えば、手塚治虫のライフワーク『火の鳥』でも『平家物語』を偽書扱いしてたことを思い出す。

歴史というのは日々書き換えられており、最近では以前の教科書で書かれていたことが大分書き換わっているというネタが良くテレビなどで扱われているが、こういった偽書を巡る「歴史」というのも知っておくと面白いと思った。あと韓国への偏愛溢れる荒山徹氏のファンにもお勧め。