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グーグル八分とは何か
吉本 敏洋
九天社 2006-12
評価

by G-Tools , 2007/01/06

悪徳商法?マニアックス(通称悪マニ)管理人として知られるBeyond氏による、Googleによる"検閲"について書かれた一冊。正月用に購入したのだが、読み始めたら止まらなくて一気に読み切ってしまいました。

本書では、グーグルが一方的に情報を遮断する事例が幾つも出てきます。筆者自身がグーグル八分に遭っているだけに細部まで踏み込んでいます。
もっとも、多くは既にネット上で語られており、Beyond氏のサイトをチェックしていれば、多くは既知の事例だとは思いますが。
取り上げられている事例は、
  • ウェディング問題
  • グロービートジャパン(ラーメン花月)
  • 大東建託
  • アラキ工務店
  • フリーライター山岡俊介氏
  • 迷惑メール撲滅私的調査委員会
  • アスキー
  • ガルエージェンシー(探偵ファイル)
  • 朝日新聞社
ちなみに、俺はウェディング、グロービートジャパン、山岡俊介氏、朝日新聞の件は知っていましたが、後は初見でした。何がBeyond氏のサイトをチェックしていれば、多くは既知の事例だとは思いますがだ!

本書では第1章で、グーグルの歩みとグーグル八分について。第2章でグロービートジャパンについて。第3章で上記で挙げた様々なグーグル八分の事例の紹介、第4章でグーグル八分について弁護士の山口氏と「図書館の自由委員会」副委員長西河内氏へのインタビュー(と言うか対談に近い)、第5章で総括と言う構成になっています。

さて、Googleは自社の方針について以下のように述べています。
Google: ヘルプ センター
ウェブ検索ヘルプ > Google について > Google の方針
検索結果を検閲していますか。
ポリシーと方針 : Google と検閲 - ヘルプ センター コメントを見る
Google の方針として、検索結果に対する検閲は行いません。しかしながら、各国の法律、条例、政策の求めに応じ、これを行うことがあります。このような理由で、ある検索結果を削除する場合は、該当する検索結果のページに告知します。
これは事業を営む上で避けられない事項だと思いますが、問題はその方法でしょう。Beyond氏も本書に於いて、そのように指摘しています。本書によれば、グーグルは当事者の一方からの申請に基づき、告知なしに検索結果からの削除を行なっているとのことです。両者の言い分を聞いた上で判断すると言った手続きは一切無いそうです。 これが如何に恐ろしいことか。
グーグル(や他の検索サイト)の検索結果に表示されないサイトがどれぐらいの人に認識されるのだろうか。

グーグルは既に"サーチエコノミー"と称される経済圏を構築しつつあり、今後更に拡大していく見込みです。
グーグル八分が致し方ないとしても手続きの透明性や基準の明朗さが必要だと思います。本書に上げられているようなやり口では、グーグルにとってもマイナスの効果か得られないのではないでしょうか。
個人的には情報大航海プロジェクトなんかに大金つぎ込むよりも、そう言った紛争解決に寄与してもらいたいと思っています。本書でもそう言う話題が上がっています(第4章)が、国家による規制には否定的な意見です。本来であれば、検索業界が連合して紛争手続きの基準、手順を定めて運用していけばいいと思うのですが期待は出来ないな、と感じています。

本書はそう言う思いを抱いている人には必読ではないだろうか。

ちょいと不満を上げれば、グロービートジャパンの事例に踏み込みすぎな点と、グーグルウェブマスターツールについて触れられていない点か。

ITmedia Biz.ID:Google Sitemapsに“Google八分”通知機能 コメントを見る
刷新版のSitemapsは、ポリシー違反でWebサイトが検索インデックスから削除された場合にオーナーに通知し、インデックスへの復帰を要求するフォームも提供する。
ITmediaの言ういわゆる「Google八分」って本書で問題視しているグーグル八分と若干異なるようですが。

あと、Beyond氏こと吉本敏洋氏が同じ歳だと知って驚きました。

関連サイト

悪徳商法?マニアックス
グーグル八分対策センター : Centers of against for Google censorship

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