photo
秘太刀馬の骨
藤沢 周平
文藝春秋 1995-11
評価

by G-Tools , 2006/12/18

最近意識的に小説を読むようにしている。
と言うことで、ここのところ伝奇物時代物に興味がわいてきたのでとりあえず馴染みやすそうなものを手に取ってみた。NHKでドラマ化されたのも見たし。
結論から言うと面白かった。

まず、主人公浅野半十郎がよい。派閥に所属し、派閥の長から秘太刀探し(の補佐)を命じられ、任務に疑問を抱きながらも家老の甥を補佐して剣客との立会に奔走する一方、家では妻の気鬱に苦悩する。固有名詞を入れ替えたらそのまま企業小説になる様な設定で、この好人物に親近感を抱いた。一方、剣客達と次々と立ち会う家老の甥石橋銀次郎の秘太刀に賭ける並々外れた執念もまた凄い。最初は毒気に当てられるが、徐々に人物が見えてくると不思議と好感を抱いてしまう硬漢だ。
一方、秘太刀の使い手と目される5人の剣客達もそれぞれの事情を抱え、そこを石橋銀次郎につつかれて仕方なしに立ち会うわけだが、その事情もまた余韻深いものがある。個人的には孫之丞の章が一番のお気に入り。

本書は現代的な要素と、ミステリの要素と、時代小説の要素がほどよく組み合わさっており、時代小説初心者の俺には最適の一冊だと思った。
photo
秘太刀 馬の骨
藤沢周平 山本むつみ 内野聖陽
NHKエンタープライズ 2006-02-24
評価

by G-Tools , 2006/12/18