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SF魂
小松 左京
新潮社 2006-07-14
評価

by G-Tools , 2006/12/01

本書は(おそらく)映画『日本沈没』の公開に合わせて出版されただろうSF作家の小松左京氏の自伝的作品。結論から言うと面白かったです。

あれは大学生の頃だったか、実家の2階にある納戸の書棚にあった二冊の『日本沈没』。ふと手にとってむさぼるように読んだ。それが俺のファースト小松左京だった。で、セカンド小松左京が『首都消失』。なんて分かりやすい。

で、少年時代から高校、大学そして浪人から物書きになり、やがて万博との関わりを経て現在に至るまでのことが面白いエピソードを交えながら書かれている。氏の作品にはなんというか、無常観と希望が混淆している感を受けるのだが、これは戦中時の経験によるものかなあ、と。

日本のSF文壇の雰囲気や70年代の日本の雰囲気が分かって面白い。個人的には大阪万博に関わった経緯、その苦労話が面白かった。

先日NHKの番組に出演された小松氏を見たが、流石に年齢を感じさせる。にもかかわらず若い人たちと交流し、分からないことを教えてくれと訊ねるその姿勢に限りなくリスペクト。そりゃ今でも作品を書けるわけだと思った。

改めて小松左京作品を読もうと思わせる本でした。