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ブルックスの知能ロボット論 - なぜMITのロボットは前進し続けるのか?
ロドニー ブルックス Rodney Allen Brooks 五味 隆志
オーム社 2006-01
評価

by G-Tools , 2006/07/08

非常に面白い本だった。MITのコンピュータ科学・人工知能研究所所長による、自伝的な内容も含めたロボット・人工知能論だが、素人にも読みやすくかかれており、彼の思考の一端に触れる事が出来る。内容は以下の通り。
  1. 機械達との饗宴
  2. 人工生物の実現を目指して
  3. 惑星間の大使達
  4. もうすでに二〇〇一年
  5. 人間と住む機械
  6. 私達はいまどこに?
  7. 人間はユニークな存在か?
  8. 私達は特別な存在ではない
  9. 彼らと私達
  10. 私達と機械達
付録 ゲンギスロボットの動作原理
オーストラリアの片田舎の工作少年がやがて成長し、大学でロボットを学び、ゲンギス(Genghis)と言う昆虫ロボットを作製する。今までの、全てを処理しようとする設計に替って、昆虫のような単純な処理を積み重ねるようにして、まるで生物のようなロボットを実現する。その応用による火星探査ロボットの成功。それからヒューマノイドへ移り、"cog"やキズメットを作り、人間がそれらのロボットに"意識"を感じる様を描く。
Hasbro社と共同開発した"My Real Baby"の苦労話。
ロボットは意識を持つのか?と言う命題。そしてこれからのロボット産業の見通し、BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)など人間のサイボーグ化について。

ホンダに招聘されたエピソードなどもあり興味深い。割とメカトロニクス先行の日本のロボットについて批判的な記述も目立つ。もう一つ興味深かったのが、ロボットが"意識"を得るために、身体性が必要だと言う認識。ちょっと思い出せないが、日本のロボット工学者も同様の事を言っていたはず。こっちはフィクションだが、瀬名氏の"デカルトの密室"に通じる問題意識もある。

ちょっと自慢めいた苦労話も含め、非常に興味深い内容だった。ロボット工学に興味を持つ人にはお勧めの一冊。

ただ、原著が2002年出版なので内容的に古い部分が目立つ。なんでこれが日本の出版までに4年もかかるのか。残念でならない。

あと、これはひどいと思ったのは、"ネアンダール猿人"と言う翻訳と、P.47の"サン・マイクロシステムズ社の社長スティーブ・ジョブス"と言う記述。原著に誤りがあるのか、翻訳ミスなのか分からないが、幾ら何でもこの間違いは無いだろうと思った。

それにしてもこう言った教授と会話を交わせるrobo@survivorさんは羨ましいな、と思った。

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