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コンプリート・ロボット
アイザック アシモフ Isaac Asimov 小尾 芙佐
ソニーマガジンズ 2004-08
評価

by G-Tools , 2006/06/25

最近では、"トリビアの泉"の冒頭に登場するおじさんと言う理解をされているだろうアイザック・アシモフ。言わずと知れた、"ロボット工学三原則"の提唱者であり、古典SFの大家である。
そのアシモフの"ロボット物"の31篇を集積したのが本書。
収められているのは以下の通り。発表順ではなく、ロボットの分類に寄っている。また、共通の登場人物が多く、年代順に読み解く事が出来る構成となっている。
序文

第一章 非ヒト型ロボットたち Some Non-human Robots
親友 A Boy's Best Friend
サリーはわが恋人 Sally
いつの日か Someday

第二章 不動型ロボットたち Some immobile Robots
物の見方 Point of View
考える! Think!
ほんとうの恋人 True Love

第三章 金属製のロボットたち Some Metallic Robots
AL76号失踪す Robot AL-76 Goes Astray
思わざる勝利 Victory Unintentional
かくて楽園にあり Stranger in Paradise
光の詩 Light Verse
人種差別主義者 Segregationist
ロビイ Robbie

第四章 ヒト型ロボットたち Some Humanoid Robots
みんな集まれ Let's Get Together
ミラー・イメージ Mirror Image
三百周年事件 The Tercentenary Incident

第五章 パウエルとドノヴァン Powell and Donovan
第一条 First Law
堂々めぐり Runaround
われ思う、ゆえに……  Reason
野うさぎを追って Catch That Rabbit

第六章 スーザン・キャルビン Susan Calvin
うそつき! Liar!
お気に召すことうけあい Satisfaction Guaranteed
レニイ Lenny
校正 Galley Slave
迷子のロボット Little Lost Robot
危険 Risk
逃避 Escape!
証拠 Evidence
災厄のとき The Evitable Conflict
女性の直感 Feminine Intuition

第七章 二つの頂点 Two Climaxes
世のひとはいかなるものなれば…… That Thou Art Mindful of Him
二百周年を迎えた人間 The Bicentennial Man

おわりに
謝辞

この中では、やはりロボット心理学者スーザン・キャルビン博士の物語が一番面白い。死してなお作品に存在感を残す彼女はアシモフの連作の中でも別格だ。中でも、冷酷な人物と描写される彼女の人間性が浮かび出る作品、"うそつき! Liar!""レニイ Lenny"が俺は好きだ。
また、これも定番中の定番だが、子守ロボットと少女の友情を描いた"ロビイ Robbie"も素晴らしい物語だと思う。
アンドリューNDR114 また、アシモフ自身が一番好きな作品といい、映画化もされた作品"二百周年を迎えた人間"。映画も良かったが、この短編も良い。出来れば映画と見比べてみると更に面白いんじゃないだろうか。ちなみに映画は"アンドリューNDR114"。

アシモフと言うと、ジョブナイルものも含め昔から何度も読んでいるので、もうすっかり理解している気になっていたが、改めて読んでみると、本当に優れた洞察と予見を含んでいるのだなあ、と言うのが分かる。
例えば、ロボット工学三原則に関しては、フレーム問題云々と言う事が良く言われている。実はアシモフ自身が、その命題に対してアンチ・ユートピア的な皮肉を含んだ一遍を書いていることを知らなかった("世のひとはいかなるものなれば……That Thou Art Mindful of Him")。また、アシモフ作品と言うのはスタートレックと並んで欧米におけるロボット開発状況を知る際に、必須の教養と言う気がする。