「みんなの意見」は案外正しい「みんなの意見」は案外正しい
ジェームズ・スロウィッキー

角川書店 2006-01-31
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俺は"集合知"と言うものに対して極めて懐疑的故に眉に唾をつけて読んだ。結論から言うと、この本は俺の懐疑を補強してくれる内容であった。

本書において、様々な"集団"が如何に間違えるか、の事例が豊富に載っている。それに対して、集団が"正しく"判断するには以下の要素が欠かせないと主張している。

  1. 多様性(各人が独自の私的情報を多少なりとも持っている)
  2. 独立性(他者の考えに左右されない)
  3. 分散性(身近な情報に特化し、それを利用できる)

上記の条件を満たす"集団"ってどこに存在するのでしょうか?

本書では様々な社会学的"実験"を例に挙げていますが、実際の社会において多様で、独立していて、分散している集団なんてどこにも存在しないのでは?

"予測市場"が事例に上がっており、実際に選挙予測では世論調査よりも精度は高かった記憶がある。
だが、株式市場の"バブル"を例に挙げるまでもなく、市場はしばしば暴走する。これは市場に参加する人たちが、"多様"かもしれないが"独立"していないせいではないだろうか?

現在は、インターネット等の技術を利用し、個人が容易く"繋がる"事が出来る時代だ。この複雑系であるところの社会において、"独立性"なんてあり得ないのじゃないだろうか。

また、情報は増えたが一人の人間が処理することの可能な情報はやはり限られている。自ずと情報源というのは限られており、本書で言うところの"情報カスケード"や"集団極性化"を引き起こしがちな状況になってはいないだろうか。キャス・サンスティーン教授が『インターネットは民主主義の敵か』に於いて指摘した様に。

そんなわけで、読後、"みんなの意見は案外正しい"けど"みんな"というのは"空想上の生き物"なんだ、と言うのが俺の感想。

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The Wisdom of Crowds (みんなの意見は案外正しい) : tokuriki.com コメントを見る
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