インターネットは民主主義の敵か
結構挑発的な書名だけど、原題は"Republic.com"。日本語風にすれば"共和国(or制)ドットコム"。
ちなみに、興味を持ったきっかけは週刊アスキーの連載『地球村の事件簿』。
歌田明弘の『地球村の事件簿』: はてなダイアリーがテロを撲滅する?このようなことが書かれていた。
インターネットは、過激な思想やニッチな欲望を共有し理解し、それを育む。では、インターネットは危険な道具なのか。とりあえず、乱暴に要約すると、情報技術の進歩によって"フィルタリング"技術が向上し、人々は"自分好みの"情報だけを得ることが出来るようになる未来。ニコラス・ネグロポンテ教授が"Daily me"(デイリー・ミー)と名付け、ビル・ゲイツが自著でその実現を予言したもの。 かつて、輝かしい未来と思われた"パーソナリゼーション"が、民主主義にとって危険だと著者は説く。同じような意見、考えのばかりが集まってそれが増幅され先鋭化していく。"エコー・チェンバー"で響きあう"サウンドバイト"が人々を分断し、、サイバーカスケード現象を起こす。
いやいや「リンク」というのはそうした思想や欲望の雪だるま現象を防ぐ働きもするはずだ、と言っているアメリカの憲法学者がいる。
どうすればいいのかというと、強制的に、対立する考えのサイトにリンクを張るルールにすればいい、というのだ。もっと効果的な方法は、党派的なサイトを見ていたら、反対の考えのサイトに無理やり飛ばすなり、ページが開くようにすればいい。
キャス・サンスティーンという憲法学者の『インターネットは民主主義の敵か』は、まじめで堅い本なんだけど、こうした指摘をしていて、これには思わず笑ってしまった。冗談でも何でもなく、まじめにこうした唖然とするようなことを書くとは、なかなかスゴイ学者だ。
ちなみに、"エコー・チェンバー"とは
磁気の録音、再生による複数の遅延音発生器。テープ・エコー(All About【DTM・デジタルレコーディング用語辞典】 最新キーワード300)のことで、サウンドバイトとは
((ニュース番組などで抜粋引用される政治家などのコメントの一部分))(goo辞書)
先の総選挙の時に、色々なブログを見て回ったが、同様の感想を抱いた。極論とも思える意見に対し、賛意を示すコメントが複数付いており、正直寒気を覚えた。ブログのコメント欄はともかく、2チャンネルに代表されるような掲示板などでは更に"場の圧力""同調圧力"(="空気嫁")が強く作用するだろう。嫌なら出て行けばいいのに、と言う言葉とともに。
もっとも、はてなブックマークには冷静な意見がコメントされていたわけだが。
そういえば遥か大昔、Yahoo!の検索結果にLycosやInfoseekへのリンクがあった時代があったけ。牧歌的なインターネットの黎明期。あの頃のインターネットは希望に満ちあふれていたよなあ。
筆者はサイバーカスケード対策として"反対意見への強制リンク"を提唱していて、それが歌田氏に"はてなダイアリー"を想起させたというわけだが。あながち的はずれではないような気がする。色々ブログを見て回っているが、俺が見ている範囲で"はてな"程様々な議論が広げられている所は無い。ユーザー層の偏りは感じるけども。
ここから本の話とは離れるが、最近は"パクリ"やら"DQN"関連でブログが炎上したり社会問題になる事例が多いと思う。ネットには現実社会のようなしがらみや体裁を気にしなくても良い分、やたらと"正義"を振りかざす人が多いような感じがする。
現実社会においては「それは正論だけど色々事情が・・・・」で濁されることが、ネットでは"パクリだ!""犯罪だ"と糾弾されるような気が。いわば、子供の正義が大手をふるってまかり通る世界というか。
それらがエコーチェンバーで反響拡大し、正義の絨毯爆撃が…という妄想。
話を戻す。
俺は法学部を出たくせにあまり法律とか制度と言うものを信用していなくて、むしろ技術とかイノベーションというものを信奉している。こう言った社会的な問題意識とテクノロジーが幸福な結婚をしたらインターネットはもっと楽しくて安全なものになるのかもな、と仄かな期待を抱いた。
hReview by tomozo , 2005/10/24
- インターネットは民主主義の敵か
- Cass Sunstein 石川 幸憲
- 毎日新聞社 2003-11
インターネットは民主主義の敵か(原題:Republic.com) - takahata_kazuoの日記
コメント一覧
itochan さん
「子供の正義」?正義は正しいのです。
「自分好みの意見の先鋭化」ですが、同意ばかりという現実は確かにあります。
掲示板やブログで「議論」が生まれてもおかしくないのですが、「空気嫁」に代表されるように、議論が発生することを怖がっている気がします。
それが「子供の議論」になるから…とでもいいましょうか。
インターネットは子供の王国なのかもしれません。
ともぞー さん
こんばんは。
近ごろ忙しくて今頃レスポンスです(^_^ゞ
近ごろ原理原則ばかりを強調する論が目立って、これは現実社会でのしがらみからフリーである事の側面かなぁ、と考え敢えて"子供の正義"って読んでみました。
正しい事は正しい事なのだけど、正しい事だけでは世の中動きにくくなってしまうよなぁ、という思うのですよ。もう少しゆとりや遊びがあってもいいのに。
この件はもう少し考えてみます。
議論については、神学論争は良く目にするのですが、身のある議論ってのはあまり目にしないですね。それか馴れ合いか。
コミュニケーション技術の進歩が逆にコミュニケーション能力を削いでいるのかな、という気がしないでもないですが、これももうちょっと考えようと思います。
itochan さん
関連してもう一つだけ書き残していきます。
トラックバックのマナーについてなのですが、極端な場合リンクがなければ弾くシステムを導入している人もいますし、単にマナーとしてリンクしてくれと要求している場合もあります。
単に引用したり、同意する意見の場合はそれでもいいのですが、反論意見の場合は本文中ではリンクしにくいと思うのです。
だから本当はTBを送ったサイトを自動的に列挙するシステムがついていた方がいいと思うのですがあまり見かけません。
つまりリンクなしでのTBも、話が繋がっていさえすれば断る必要はあまりないと思うのです。(大量発信はコメントであろうとTBであろうと論外です。)
これは全く個人の意見ですので、わたし自身のブログだけのポリシーではありますが、関連ニュースの広がり、議論の深まりを最重視して、気軽にコメント、TBしてくれたらいいな、と思ってます。
ともぞー さん
トラックバックに付いては俺も昔色々悩んだのですが、言及して意見を述べる場合のみ送るようにしました。
最近ではアクセス解析を利用する人も多いし、リンクだけなら送るまでも無し、という判断で。
受ける方に関しては、悪質なもの以外は受け入れる様にしています。あまりがたがた細かいこと言うのもなんだし。
ほんと、気軽に行なえばいいと思いますよ。
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