まず、分厚い。電車の中で読むには適さない圧倒的なテキスト。結構速読派な俺も読むのに結構時間がかかってしまった。
内容は、瀬名秀明氏による古今東西の"ロボット"に関する物語と、それと交錯するロボット工学、人工知能研究等についてまとめたアンソロジー。取り上げられているロボット小説ももちろんのこと、その合間にある第一線の研究者、或いはリアルロボットアニメの製作者等のコラムも面白い。
1930年代までを区切りとし、ロボットの前身ともいえる神話におけるゴーレム、フランケンシュタインの怪物、自動人形と書いてオートマタ、からくり人形等の話題を取り上げ、カレル・チャペックが"R.U.R"において"ロボット"と言う言葉を創作、アシモフからアトム、サイバーパンク、リアルロボットまで様々なロボットを取り巻く物語が取り上げられる。同時に、当時のロボット工学や人工知能研究までロボット関連する技術・学術的な取り組みを取り上げ、それらが相互にどの様な影響を与えたか、についても言及。例えば、ホンダが"アトムを作れ!"と言う言葉の元にASIMOを開発したことは広く知られているエピソードだと思うが、他にもroombaで知られるiRobot社の創業者が"R2D2"を作ろうと思っていたり、産業用ロボットのパイオニア"unimation"社の創業者が映画"禁断の惑星"に登場する"ロビィ"をみて、ロボットを作ろうと思い立ったとか、"物語"と"テクノロジー"が相互に影響を与えていることが読み取れる。まあ、必ずしも良い影響ばかりではなく、例えば"フランケンシュタインコンプレックス"の様に、テクノロジーに対する恐怖を植え付けたりもするのだが。
ロボット工学を学ぶ人には常識的なことかもしれないけど、単なるロボット好きにはこのロボット工学の辿った道をなぞるだけでも面白かった。収録されている作品のうち、心に残ったのは以下の通り。
- 孤独な機械(1932)ジョン・ベイノン・ハリス(ジョン・ウィンダム) 金子浩=訳
- フロストとベータ(1966)ロジャー・ゼラズニイ 浅倉久志=訳
- コスモノートリス(2002)藤崎慎吾
それにしても読後は"まるいち的風景"が読みたくて仕方がなくなってしまった。。。
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