photo
成功して不幸になる人びと ビジネスの成功が、なぜ人生の失敗をよぶのか
神田 昌典 平野 誠一
ダイヤモンド社 2003-12-05

by G-Tools , 2005/08/01

stars May the Forth be with you.

お、ブッシュ政権の前商務長官がこんな本を・・・と手に取った本書。著者は"ジョン・オニール"。前商務長官は"ポール・オニール"でしたな・・・

それはさておき、まず最初の印象は、これってジェダイの教えに似ているな。

本書は、経済的に成功を収めた人々の多くが私生活では多くの悩みを抱えており、決して幸福ではないことに対する分析及び対処法をまとめたもの。その内容は、成功者にだけ当てはまるわけではなく、成功していない(俺のような)人々にも多々当てはまるだろう。

そしてこれは個人のみならず、組織についても然り。
えっと、アナキン・スカイウォーカーとか若貴兄弟とか、堤元西武会長とか三菱自動車とかエンロンとかワールドコムとか色々思い当たりませんか? 少し前の"IT Pro 記者の目"にまさしくそんな会社のコラムが。

あるIT企業の憂鬱:ITpro コメントを見る
成功した人物が何故不幸に陥るのか?著者はその原因を"シャドウ"としている。"シャドウ"とは心の奥に潜む、認めたくない自分自身のこと。或いは成功を導いた資質の反対。自我の肥大化と共にシャドウも生長し、自分自身を苦しめる。そして多くの人・組織はシャドウの存在すら認めることが出来ない。と言うことを筆者が関わった多くの事例から導き出している。
優れた資質が成功に伴いシャドウと化すと言う事例も。例えば、"気の利いた風刺"が"嫌みな毒舌"に"慎重さ"が"臆病"に、"リーダーシップ"が"生き過ぎた管理主義"にと言う具合に。

つまり執着は恐れに繋がり、恐れはダークサイドに繋がる。…選ばれしものだったのに!。
そして後半においてはそのシャドウとのつき合い方について。
まずはシャドウの存在を認めること。そしてシャドウと対話することを論じている。個人で言えば自己の内側と対話し、隠された欲求や不満について良く考えること。組織で言えば隠し事をなくし、真摯に語り合うこと。

その方法論として瞑想や、儀式等を挙げている。また、自己と向き合い、必要であれば変化を受け入れる(仕事を変える、新しい趣味に挑戦する等)事を進めている。
面白いと思ったのは学習曲線の項。
だれしも新しいことを始めた時は何もかも新鮮で意欲に溢れどんどんと多くことを吸収するが、やがてそれが頂点に来ると、惰性でことを済ませたり、興味を失ったり。そして曲線は下降する。そうなった際に新しいものへ挑戦する、やり方を変える必要性を論じている。
一通り読んでみて思ったのは、これってゲイツが言っているそして実践していることと相似だな、と言うこと。

以前、ビル・ゲイツの著作"思考スピードの経営"を読んだのだが、その中で書かれていたことの多くが当てはまる。
経営陣は悪いニュースが伝わるようにするべきだと言うこと。そしてデスクトップOSで成功を収めたマイクロソフトが一転してインターネットに注力し、ネットスケープを駆逐した後にはセキュリティにそのフォーカスを当てる辺り、上記学習曲線で書かれていることと見事に一致し、ゲイツが優れた経営者であることを再認識。
それはさておき、ヨーダの言葉にも通じるところがある本書。ダークサイドに落ちないためにも是非選ばれた人にそうでない人に読んでもらいたい。

May the Forth be with you.

hReview by tomozo , 2005/08/01