初代iPod(M8513J/A)が壊れた。ちょうどiPod shuffleを購入したその日に。正確に言うと、前々から不調だった初代iPodにiPod shuffleが引導を渡す結果となったのだろう。

ことの起こりは、ほんの出来心。iPod shuffleを起動ディスクに出来ないか?と言う試みだった。

アップルがiPodを起動ディスクにするのは推奨していないことも知っていたし、FAT32でフォーマットされているので無理だろうとは思っていたが、試しもせずに断言するのはいかがなものかとやってみたのだった。

もちろん、CD-ROMで起動したインストーラーはiPod shuffleをドライブと認識せず、目論見は(予想通り)潰えた。

Sad iPodそして何度か再起動しているうちに、おぞましい異音がPCラックの下から響き渡る。最近不調のPowerMac G4か?いや、ケースは振動しておらず。机上のlibrettoも同様。そのけたたましい金属を摺り合わせた様な音が、初代iPodから発していることに気づくのにはしばらくかかった。
しばらくするとその音は鳴りやんだが、いつもなら表示されるデスクトップ上のiPodアイコンが見あたらない。ディスクユーティリティでも見あたらない。但し、Apple System Profiler(Windowsにおけるデバイスマネージャの高機能版)で見る限り、FireWireで繋がっていることは確認された(そしてボリュームがマウントされていないことも)。iPodのケーブルを抜いてみると、"sad iPod"アイコンが表示。二回目のご対面である。慌てずmenu+再生・一時停止ボタンを押し、iPodを工場出荷状態に戻す。

おぉ!起動した!

言語を日本語にして、鬱陶しいクリック音をオフにした後、再度Macにつなぐ。iPod ソフトウェアを立ち上げ、ファームウェアを最新版に。iTunesとの同期が始まり一安心。流石、iPod shuffleとは段違いの速さだ。夜も遅く、眠かったので、いったん同期を止めてログアウトしようとiTunesの×ボタンをクリックする。・・・フリーズしました。。。orz

iPodの画面を見ると接続を解除しないでね、と言う表示。Macを再起動させておそるおそる確認すると、電池がない旨表示されて、暗くなる。最早リセットも効かない。ACアダプタに接続して試みるも、変わりはなく、死亡判定をしても間違いではないだろう。おそらくディスクに加え、基盤周りも逝ってしまったのだろう。
奇しくも新しいiPod shuffleの到来とともに大往生したわけだ。。

ここのところ、Macが起動しなくなる、ブラックアウトする、ルーターとのセッションが途切れる等の不調が続いており、Macとルーターを同時に買い替えなくてはいけないな、今度は無線LANにしよう、いやいやPowerBookは高いからMac miniなら今のモニタとキーボード&マウスが使えてお買い得じゃないか、いや初期のシネマディスプレイだから解像度がXGAなのが嫌なんだよね、と言う会話を妻としていたのだが、どうやら初代iPodの死とともにMacは復調し、当面は現在の環境のままになりそうだ。Mac miniとPowerbookとの比較という脳内エントリーも世に出ることはなさそうだ。

iPodの思い出思い入れ

最初は落胆したものだった。2001年10月23日のAppleのが"画期的なデジタルデバイス"を発表するというニュースに期待に胸をふくらませ、それが5GBのハードディスクを搭載した"MP3プレーヤー"であることに落胆し、実物を見て欲しくなったものの、その値段(当時49,800円)に躊躇していた。

それをクリスマスにプレゼントしてくれたのが当時つきあっていた彼女。そして現在の妻。当初は嬉しくって、片道10分の通勤時間にも欠かさず聞いていたもの。冬場は上着のポケットに入れていたが、夏場はその発熱と重さと収納の問題から遠距離移動時のみに聴くようになった。新幹線では良い供だった。

名古屋に引っ越して以来、FMトランスミッターを購入し、車載オーディオと化していた。さんざん悩んで購入したトランスミッターが、雑誌で「AMラジオ並みの音質」と書かれていてがっくりしたもの。でもまあ、俺としては非常に満足だった。

その間にもiPodは進化を続け、ハードディスクの容量は増え、miniが加わり、Photoが加わり・・・でも特に心が揺れるほどではなかった。初代iPodの完成度が高かったのもあるし、妻からの贈り物と言うことで非常に思い入れが強かったというのもある。

iPodの何がそんなに良かったのか?俺にとってはお洒落な(と評される)外観より、ホイールによる操作よりも、IDタグというメタデータによるファイル管理が何より素晴らしく思えた。iPodの宣伝コピーの一つに"Goodbye MD"というのがあったが、今までレコードやCD(CD-DA)やMDなどの物理メディアに制限されていた音楽環境が自由に持ち出せるようになったと言うのが何より素晴らしく、またそれらをアーティストやジャンル、アルバムと言ったくくりで自在に見いだせたというのも素晴らしかった。Appleは2001年10月23日の発表通り、"画期的な新製品"を世に送り出し、音楽の聴き方に革新をもたらしたのだ。

最近は雑誌そのものをあまり見ていないが、雑誌やネットでのレビューにおいて"エクスプローラと同様に操作できるので使い易い"と言う記述を見たら、その製品及びライターはクソと見なしていいいのでは、と思う。それぐらいiTunes及びiPodのファイル管理は便利で素晴らしかった。

しかし、最早iPodは戻ってこない。修理に出したところで、保証期間のとっくに過ぎたiPodはiPod miniより高くつくだろう。

iPod shuffleの到来とともに息を引き取った初代iPod。自分の役割を終えたことを悟ったのだろうか・・・・等という機械に魂があるかのような考えは認めない。君子怪力乱神を語らず。ただ、不調だったiPodに電気的にとどめを刺したのがiPod shuffleだっただけと言うことだろう。あるのは、作った者の思いと、使う者の思い入れ。

この思い入れと思い出のあるiPodを俺は捨てることが出来ない。分解してハードディスクを抜き取り、写真立てにでもしようか、等とぼんやり考えている。

いつか、iPod shuffleより小さい機械にiPod Photo以上のデータを入れて持ち歩くであろう我が子に、初代iPodを見せて、この機械がもたらした革命について語ろうと思う。