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世界が恋した美人時計

stars 美人時計成功の裏側

2009年にブレイクした『美人時計』の創業者及び"育ての親"による企業から離陸までを綴った一冊。
前半は創業者の中屋氏、後半は育ての親橋本氏による。文体がそれぞれのキャラクターを反映していて面白い。
さて、美人時計は個人的に2009年にもっとも成功したウェブサービスとみなしてるのだけど、開始から苦難の連続だったようだ。
一見美人の写真を次々表示させるだけの安易な誰にでも思いつくようなサービスに見えるかもしれないが、その見せ方や広め方などにトコトン煮詰めた上のサービス展開だったと分かる。たとえば、時計として見せるボードをどうするか、無地のボードに上から時計を表示するのか?ポーズはどうするのか?写真はどのようにそろえるのか?試行錯誤の上手書きのボードを持った4ポーズの写真に落ち着き、それがその後の標準フォーマットに至る等創業時のエピソードに事欠かない。そして、開始後の運営はまさに綱渡りの連続だったようだ。
ブレイクする一方、爆発するアクセスによるサーバ負荷に加え、スクレイピングや模倣者に苦慮したことも伺える(当時月額数百円のレンタルサーバを使用し、追い出される度に新しいサーバに乗り換えるようなことをしてたらしい)。
当時、美人時計の画像を利用しようとしたギーク連との軋轢なども記憶に新しいところ。話題になった広報担当東條氏の名前も登場する。

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橋本氏によると、この頃は体制的にも法務的にも全くなっていなかった状態で、どこから手をつけるか頭を抱えたらしい。
そういえば当時TumblrのDashboardのしおり代わりに美人時計の画像を使っていたけど、いつの間にやら拒否されるようになったなあ…(笑)
美人時計でもっとも感心したのはマクドナルドとのタイアップ広告で企業名を明示しないで話題生成に成功した事例として強く印象に残っている。もちろん、本書にはその時の裏話もばっちり載っている。で、見事乗せられたなあと。
その他海外展開や地方展開について等もどういう目論見でタイアップを行っていったのか、軽い文体ながら力強い考えが記述されている。
iGoogleをホームページにしなくなって以降美人時計を目にすることもなくなり、また、バイアウトを機に株式会社美人時計への関心もなくなった自分だが、当時を懐かしみながら面白く読むことが出来た。読み物としても面白いし、今後起業を考えている人には色々得るものがあるのではないでしょうか。

hReview by tomozo , 2012/04/12

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世界が恋した美人時計 大ヒットサービスが生まれたヒミツ
中屋 優大 橋本 竜 田中 慎也
サンクチュアリ出版 2011-04-15

ラーメンと愛国

stars 帯文に違わずスリリングな読み物

筆者のブログ/twitterを追いかけているので出版前から楽しみにしていた一冊。予約して発売日に入手して一気に読んだ。

本当は二度読んでから何らかの感想を書こうかと思っていたが時間がとれそうにないのでとりとめもなく書く。

本書は『ラーメンから現代史を読み解くスリリングな試み!』と言う帯文に違わず、ラーメンという異国由来の食物が戦後どのように浸透し、変遷していったのか、政治や生産技術等と絡めて解き明かしていく。

そういえばあの頃のラーメンはそうだったよなあ…と言う想い出とリンクしながら読み進めていった。
子供の頃、近所のショッピングセンター的なところへ行くと店の近くに『札幌ラーメン』のチェーン店があってそこでたまに味噌ラーメン(トッピングにコーン)を食べたこと。高校生大学生の頃には袋麺の『サッポロ一番』をよく作って食べていたこと。やがて地元にも遅れて『ご当地ラーメン』的な店が増えてきたこと。東京に出て豚骨ラーメンなどの『有名店』に行ったことetc etc。

そしていつの間に駅ナカやショッピングモールの目玉としてラーメン店を複数揃えているところが増え、そして壁にポエムが書かれた店内では作務衣の店員。

おおっと思ったのはP.94からP95にかけて『チキンラーメン』が当時の企業としては珍しく子供向けのマーケティングを重視していたと書かれてた所。子供の通う幼稚園に『食育』と称してイベントを実施していたのもその流れなのだろうか。あのヒヨコがきて踊りを教えてくれて、お土産にチキンラーメンとグッズ(どんぶり)くれたり。手法は異なるものの根底の思想は引き継がれているのかな。

読み終えて少々不満だったのは、名古屋在住者としては『スガキヤ』が一切触れられていない点。まあ、日本通史で見た場合はそうなるのだろうなあ、とは思いつつ。あと気になる所として、ラーメン漫画とかフードコーディネータ等が果たした役割とか無いのかな?ちなみに『麺屋武蔵』についてはヤングジャンプの読み切り漫画で知った口です。

最後に、やはり書かれなかった最終章が読みたかったな、と言う思いが残る。いつの日にか、最終章が追記された愛蔵版が出ることを望む。

hReview by tomozo , 2012/01/19

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ラーメンと愛国 (講談社現代新書)
速水 健朗
講談社 2011-10-18

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誰が小沢一郎を殺すのか?画策者なき陰謀

stars 老いたな…

学生時代以来久しぶりにカレル・ヴァン・ウォルフレン氏の著作を読む。
昔読んだ時かなりの厚みがあったので、今回も覚悟していたが思いの外薄い。

内容も薄かった…
90年代深い洞察と見識でうならせた氏も時代に追いつけないのか
政権交代前からネットに飛び交う流言飛語とデマ、或いは『日本会議』などの伏流については一切触れておらず、正直失望した。

発売前の期待が高かっただけに残念である。

hReview by tomozo , 2011/05/26

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誰が小沢一郎を殺すのか?画策者なき陰謀
カレル・ヴァン・ウォルフレン 井上 実
角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-03-02

『大人の科学マガジンVol.30 テオ・ヤンセンのミニビースト』がAmazon.co.jpで予約できるようになっていた

1月に発売される『大人の科学マガジン Vol.30 テオ・ヤンセンのミニビースト』がAmazon.co.jpで予約できるようになっていたのでメモが替わりに。

Vol.30 テオ・ヤンセンのミニビースト | 大人の科学マガジン | 大人の科学.net コメントを見る コメントを見る

イマココ――渡り鳥からグーグル・アースまで、空間認知の科学

stars 空間認知と行動の不思議

俺は割と方向音痴で、車で移動する時はカーナビゲーションが、徒歩でみしらぬ場所へ行く時はiPhoneのマップが大活躍な訳です。しかし、何故人間道を間違えるのか。それにも関わらずここまで繁栄できたのは何故か…?本書は、空間認知とそれに起因する行動様式について多面的にアプローチする一冊。
パート1では人間の他に、蜂や蟻、鳩などがどのように空間を認識しているか、また、南太平洋や北極圏、砂漠などの過酷な環境において、見事なナビゲーション能力を獲得した民族が,どのように空間を認識しているか。 パート2では空間からのアプローチを。家屋で、職場で、都市で…とスケールを拡大しながら空間と人間の行動の関係を解き明かす。その過程で何故ル・コルビシュの都市計画が失敗し、スラム化がすすむのか。またスプロール現象とコペンハーゲン化等について興味深い記述が見られる。特に受けたのが、いわゆる『共有地の悲劇』の誤りを実証的に示したところ。あれは茹で蛙と同じぐらい馬鹿馬鹿しい(例え)話だと思っているので我が意を得たりという感想。
サブタイトルにGoogleアースとあるが、ジオキャッシングを含めそう言ったネタは少なめでそちらを期待すると期待はずれかもしれませんが、個人的には興味深い知見が得られる読書でした。

hReview by tomozo , 2010/07/27

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イマココ――渡り鳥からグーグル・アースまで、空間認知の科学
コリン・エラード Colin Ellard 渡会 圭子
早川書房 2010-04-22

『ヤフー・トピックスの作り方』と『ヤフートピックスを狙え』

stars 日本でもっとも影響力のあるニュースサイトの内側

日本でもっとも影響力のあるサイトの一つ、Yahoo!トピックスの編集者によるYahoo!トピックスの作られ方について手堅くまとめた一冊。
編集部の一日の流れや、何故トピックス(見出し)は13文字なのか、何故!を使ったり、煽りや騙しの技法を使わないのか、トピックスが偏らない為にどのような工夫が試行錯誤の上に積み上げられてきたのかが分り易く且つ明晰に書かれている。
本書に通底しているのは筆者奥村氏のフィロソフィーというか、信念というか一種の『メディアとしての責任感』 これをもっとも感じるのは第三章と第四章。
第三章では読まれるニュースと、報道価値のあるニュースの間にある葛藤とメディアとしての責任を、第四章ではTechCrunchのジャンクフードコンテンツ論等をを引き合いに出しながら、ニュースとは何か真摯に向き合っている。
逆に、最後の『トピックスに載るニュース、載らないニュース』はとてもあっさりしている。これは『ヤフートピックスを狙え』に譲ると言うことか。
ただ、最後まで読み終えても一度も出てこないのが、トピックスエディター制度。この制度はどのような意図で作られ、どのように機能しているのかにも触れてもらいたかった。また、直接トピックスとは関係ないが、ヤフーニュースのコメントシステムについてどのように考えているかも知りたいと思った。

hReview by tomozo , 2010/05/11


stars Yahoo!トピックスに取り上げられるための方法論

本書は『Yahoo!トピックスの作り方』とは逆に、ニュース提供者の視点から、どのようなニュースがトピックスに取り上げられるか整理整頓したものとなっている。第一章、第二章ではヤフー奥村氏(すなわちトピックスの作り方著者)のコメントを多数引いており、内容的にも被る部分が多い。両方購入したなら飛ばしてもいいかも。ただし、ヤフーに『酒井法子氏』が在籍することを知ったのは収穫かも
それ以降は豊富な実例をもとに取り上げられやすいニュースを分類整理するとともに、どのようなアピールが効果的なのか実践的なことが多数書かれている。PRに関心がある人には非常に役に立つのではないか。

hReview by tomozo , 2010/05/11

両書を通じて、特に解説も無しにtwitterとか書かれていてそういう時代に入ったのだなあ、と言う感慨を抱いた。
また、両書は補完する無いようになっているものの、興味の持ち方によってどちらが面白く読めるか決まってくるのではないか。たとえば、俺はマーケティングとかと無縁の一般人のため、純粋に読者として知りたい事項が多い『ヤフートピックスの作り方』の方が面白く読めた。
最後に内容とは関係ないが、帯のセンスは圧倒的に『ヤフー・トピックスの作り方』が良いと思ったので機会があれば書店で手に取って比べてもらいたいなあ、と思った。

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ネトゲ廃人

stars 私が眠ると,みんな死んじゃう

恐ろしい…の一言に尽きる。
本書は、ネトゲと省されるネットワークゲームにのめり込み、社会生活や対人関係に破綻をきたしたことがある"ネトゲ廃人"達にインタビューを行い、なぜ彼らがネトゲにはまっていったかに迫るノンフィクション。なぜ彼らがネトゲにはまるのか、それがどのようにエスカレートするのか、ゲームのシステム解説を交えながら淡々と綴っている。そこで語られる壊れた日常は、俺にとっても身に覚えがある内容でとても恐ろしく感じた。
ちょっと興味深かったのは、セカンドライフで副業をしているという主婦の話。セカンドライフはどのように楽しまれているかが部外者からは見えにくいので、その一端がうかがえた。

いくつものエピソードの中で特に恐ろしいと思ったエピソードは第四章の『ママのゲームをじゃましない子ども』
ママゲームを邪魔しないように8時に隠れるように布団に潜り込む子供…
ジャンプに連載されていた『魔人探偵脳噛ネウロ』に登場する樋口結也の両親を思い起こされるエピソードで、他人事ながらものすごい不安を感じた…

無論、現在進行形で依存している人ばかりでなく、そこから脱出している人も登場するが、消して救われるような話ばかりではない。

第九章において、韓国でのネトゲ状況とネトゲ依存症への対応が取材されている。しかし、ネトゲ先進国といわれ、多くの依存症患者を出している韓国ですら、状況の把握と治療についてはまだ緒ついたばかりという…

日本においても今後さらに社会問題化していくことが予想される中、ちょっと暗い気持ちになった。

hReview by tomozo , 2009/12/07

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ネトゲ廃人
リーダーズノート 2009-05-01

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待望のノンフィクション!「ネトゲ廃人」 コメントを見る

週刊誌は死なず

stars 週刊誌ジャーナリズムへのエール

週刊現代の元編集長で、オーマイニュースの編集長・社長を経て現在は編集者の学校」を各地で開催したりJ-CastやマガジンXなどに連載を持つ元木昌彦氏による、週刊誌の歴史・問題点などを綴った新書。

まずは、上智大学で開催された週刊誌サミットの紹介から始まる。

Business Media 誠:集中連載・週刊誌サミット:編集長は度胸がない+愛情がない……週刊誌が凋落した理由(前編) (1/3) コメントを見る
発行部数の減少、名誉棄損訴訟、休刊……雑誌を取り巻く環境はますます厳しくなっている。そんな状況を打破しようと、“週刊誌サミット”が5月15日、東京・四谷の上智大学で開催された。第1部の座談会に登壇した、田原総一朗氏や佐野眞一氏らは何を訴えたのだろうか?


週刊新潮の大誤報を取り上げて、週刊誌を取り巻く状況…とくに個人情報保護法などのメディア規制と高額賠償の問題や、ネットの隆盛から週刊誌の凋落について歴史的経緯を交えながら当事者としての言葉を紡いでいる。
週刊誌の状況を嘆くだけでなく、問題点やその対策などについても具体的に述べており、中々に説得力のある一冊と言える。
個人的には、匿名情報をつなげ併せて記事を作り上げる週刊誌はあまり好きではないのだが、新聞から政治を揺るがすスキャンダルなど出てくることがないことを思うと、週刊誌ジャーナリズムにはこれからも頑張ってもらいたいと思う。

ところで、本書が気になったのはプロブロガーの佐々木氏のエントリーがきっかけだ。

記者クラブを楯にして新聞を有料化しようと企てる人たち:佐々木俊尚 ジャーナリストの視点 - CNET Japan コメントを見る
さて再び冒頭に紹介した元木氏の話に戻ろう。なんと驚くべきことにこの人は、記者クラブによる情報独占を楯にして、談合によってこの有料化戦略を成功させればいい、と主張しているのである。

本書と通じて読んでみると分かるのだが、元木氏は週刊誌ジャーナリズムを新聞系ジャーナリズムと対比する存在として位置づけ、権力と談合を繰り返す新聞・テレビメディアへの批判、対抗意識を繰り返し表明している。にも関わらず、上記のような感想が出てくるとは…

こんなバカげた話を書いている元新聞記者が、日本のネット業界では「メディアのことがよくわかっていて、われわれの行き先を指し示すことができる数少ない人」として尊敬されているのである。だから日本のブロゴスフィアは絶望的なのだ。

hReview by tomozo , 2009/11/24

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週刊誌は死なず (朝日新書)
朝日新聞出版 2009-08-07

それにしても、週刊誌やテレビのネタをまとめただけのものがはてなブックマークでホットエントリーに入ったり、既存メディアで既出のネタを随分とおくれて話題にするtwitter等を見るとついつい片頬上げて笑ってしまいますよね。

すすんでダマされる人たち ネットに潜むカウンターナレッジの危険な罠

stars ネットに溢れるカウンターナレッジの危険

いわゆる911陰謀論や、代替治療、ID論などネットに溢れる偽知識(カウンターナレッジ)の広まりに対して警鐘を鳴らした一冊。自分自身もネットでちょくちょく遭遇する偽知識には辟易していたので面白く恐ろしく読めた。
本書で取り上げられているのは

  • 911陰謀論
  • インテリジェントデザイン(ID)論
  • 擬似歴史学
  • サプリ、デトックス、ホメオパシー等の代替治療
  • 自己啓発産業
等々
本書はイギリス人の視点から書かれているので日本の状況とは必ずしも重ならないが、構造としては非常に似通っているなあ、と印象。筆者は繰り返し、由緒ある出版社や新聞、大学などがこういった偽知識の蔓延に荷担していることを嘆いているが、それも日本と同様と言える。産経新聞とか、情報商材業者と提携するネット企業とか…
ちょうどこの本を読んでいる時に、本書で取り上げられていた『ザ・シークレット』で取り上げられていた『引き寄せの法則』が日本でも出版されていることを知ってちょっと受けた。
[を] 確実に金持ちになる「引き寄せの法則」 コメントを見る
献本いただきました。ありがとうございます。
100年ほど前に書かれたウォレス・ワトルズという人物の説教本。
いろいろな成功本、自己啓発本の元ネタになっているとのこことだけど、読んでみて「ああ、あれ系かあ」と納得。
第六章ではこういった偽知識へ対抗する手段としてブロガーによるゲリラ攻撃が有効としている。
日本でも偽知識に対抗しているサイトは幾つかあるが、一つお薦めを、と言ったら幻影随想じゃないかと思う。
イスラム圏のID論や南アフリカのHIV状況なども本書の発売前にちゃんと伝えているし。

余談だが、このエントリーを書く前にGoogleで書名を検索し、有名ブロガーによる書評もどきに目を通してみたが、まるで参考にならなかったよ…

hReview by tomozo , 2009/11/17

なぜ、ティーダは世界で一番売れている日産車になりえたのか?

stars 浅い

TIIDAオーナーなのでちょっと手に取った。
読終えた感想と言えば、ちょっと残念な感じ。

もう少し、企画設計の裏話やマーケティングの詳細が書いてあるかと思ったが、ブログマーケティングの成功事例とされるTIIDA Blogにしてもさらりと触れられているぐらい。


車の設計についての話は、10年以上前に言われていたGolfの設計思想とさほど変わりはないと感じた。

攻殻機動隊に登場する等の豆知識はえられたが、特にTIIDA凄い!と言う感想は抱かなかった。
と言うかもう在庫無いのか…

hReview by tomozo , 2009/01/23

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なぜ、ティーダは世界で一番売れている日産車になりえたのか?
新発想マーケティング研究会
幻冬舎 2008-01-26

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『ケータイ小説のリアル』のアンリアル

stars ケータイ小説のリアルのアンリアル

ケータイ小説関連の話題に乗っかろうと手に取った一冊。しかし何だ…この現実感の無さは!

まず、気になるのが、本書に登場する人物の殆どが「匿名」であること。
北関東のチェーン店の書店員だとか、ケータイ小説を手がけた若手編集者とか、いずれも「名前」がない。名前が出ているのは幾つかの書籍からの引用の際に出てくる筆者名ぐらいであり、皮肉にも「ケータイ小説的」を上梓した速水氏の名前が「自分探しが止らない」の引用の際に登場する。こういった匿名コメントの寄せ集めで記事を更正するのは週刊誌の常套手段だが、おかげで本書の内容が実在の人物の言葉で書かれているのか、それとも筆者の妄想に過ぎないのか判別が付かなくなっている。

批評としてもルポタージュとしてもこれはとても評価するに値しない…等と思ったが、暫くしてふと思い当たった。
これは、ケータイ小説の高度なパステーシュとして書かれたのではないだろうか?

みたいな。

hReview by tomozo , 2008/10/07

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ケータイ小説のリアル (中公新書ラクレ 279)
杉浦 由美子
中央公論新社 2008-05-08

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そんなんじゃクチコミしないよ。 <ネットだけでブームは作れない!新ネットマーケティング読本>

stars 本当にクチコミは効果的か?

smashmediaの河野氏によるクチコミマーケティングに関するブログ本。口調がいつものブログと一緒なのでさらっと読める。大体2時間で読了。

主旨は、ブログやSNSの隆盛でクチコミが持て囃されているけど、マスメディアの影響はまだまだ強いし、ペイパーポストは効果ないし、SEOとしても疑わしい。口コミ失敗して炎上した事例がいくつかあるけど、製品の売行きにどれほど影響したのか。ブロガー集めてイベントするのもいいけど、自社の顧客を大事にしなきゃ。

と言うことと理解した。
概ね俺の感覚と一致しているが、やはり専門家の言葉で再整理されていると分り易いし、すっと入る感じがする。

途中、ペイパーポストにおける医療広告規制の問題がさらりと書かれていたが、これは俺も以前取り上げた話と一緒だろうか?

Future is mild : ブログ・マーケティング業者に法令違反の疑い〜質問と顛末 コメントを見る

そう言えば以前、SixApart社がPress@blogに出稿したことがあり、気が触れたのかと思ったら、どうやら広告効果を確かめる為の試験だったのかな。
詳しくは公式サイトや、Amazonなか見検索で確認してもらいたい。
smashmediaブックス コメントを見る

hReview by tomozo , 2008/09/30


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ケータイ小説的

stars ケータイ小説的文化と背景

しばらく前に読み終えていたのだけど、自分の中で消化出来ていなかったが、そろそろ書かないとまずいかな、と思い、まとまらないながら書いてみる。
本書は、昨年出版業界を席巻した"ケータイ小説"の深層に第一種接近を試みる力作。

まずは第一章でケータイ小説におけるあゆこと浜崎あゆみ氏の影響を指摘。その浜崎氏の詞の源泉に迫る。その中で紡木たくの『ホットロード』の影響について述べる。
そう言えば、妹の本棚に『ホットロード』あったよなあ、と思い、妻に「ホットロードって読んでた?」と聞いたら、「読んでたよーバイブルだもん」との回答。なるへそ。

第2章ではケータイ小説的リアルについての絞殺。じゃなくて考察。『恋空』がブームになったとき"実話"と"リアル"についてネットの極一部で論議が巻き起こったが、そのまとめ的考察が行われている。
特に、ティーンズ向け雑誌とケータイ小説的リアルの親和性についての指摘は、別所でも読んだのだけどURLが見いだせなかった。
個人的には年齢と知識・経験に比例して「リアル」の閾値は高まるよね、と思っている。
あと、やはり"実話"と言うのは受け手に何らかの作用を与えるのは間違いないだろうとも。例えば、「人史松本の滑らない話」でも実話であることが強調されるのはそう言うことなんだと思う。そして、その実話効果に騙されるのはケータイ小説的読者であるティーンズに限らず、いい年した人もまた。すぐに思いつく例としては「一杯のかけそば」。それに未だに一定の勢力を保っている「本当にあった」系の4コマ雑誌とか。

第3章になるとケータイ小説を生み出した郊外型文化について。郊外文化批評家の名に違わず、力強い考察が綴られる。特に気になったのは『頭文字D』に状況と言う憧れがない点及び、復活する地元つながりか。個人的には『莫逆家族』と言う漫画を思い起こさせる。
P156,157に地域別売り上げの比較があるけれど、さすが愛知、偉大なる田舎名古屋、日本最大の地方都市名古屋を域内に抱えているだけあって圧倒的であった。

第4章において恋空をアダルトチルドレンによる(妄想上)の恋人殺しに転換してしまう。その手並みは見事としか言えない。

ケータイ小説を読み解くことで、その深層にある文化と変化について力強い考察をしていてうなづかされる部分、気づかされることが多い評論だった。ただ、残念ながらケータイ小説を一編も読んでおらず、また、ケータイ小説の読者層と交わりがない俺には何処までがリアルなのか判別できないのあった…

hReview by tomozo , 2008/09/15

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「ΣBookJp」「最強☆読書生活(PC版)」サービス終了へ

予想通りなのですが、"ΣBookJp""最強☆読書生活(PC版)"のサービス終了がアナウンスされました。両サイトにて告知が出ております。しかし、何故こんな重要な告知を画像(PNG形式)で出しているのでしょうか。
【重要なお知らせ】 コメントを見る
ひっそりと、電子書籍「ΣBookJp」「最強☆読書生活(PC版)」サービス終了へ:ニュース - CNET Japan コメントを見る
松下電器産業とパナソニック システムソリューションズは6月30日、PC向け電子書籍配信サービス「ΣBookJp」および「最強☆読書生活(PC版)」を9月30日をもって終了することを明らかにした。

Words Gear登場時に書いたとおりの展開となりました。

Future is mild : 読書端末"Words Gear(ワーズギア)"の予約開始 コメントを見る
はっきり言って売れないだろうなあ、と言うのが俺の予想。賭けてもいい。Σブックと言う縁起のいい名前の松下の端末、ソニーのLIBRIe(リブリエ) に続く、失敗した電子書籍プロジェクトとして記憶されると思う。
そもそも未だ電子書籍を専用端末で読む、と言う習慣がない人にこの価格で販売するのはなあ。若い人達は携帯で読むだろうし。書店をそのまま持ち込もうとする発想が既に駄目なんだと思う

読書端末"Words Gear(ワーズギア)"製造中止

何処もニュースとして取り上げていないけれども、電子書籍端末"Words Gear"(ワーズギア)が3月27日で製造中止となっていました。
最強読書生活サイトの新着情報を見ると終了の文字が並び、撤退が間近の雰囲気を漂わせています。
最強読書:ボーイズラブ-BL/漫画-コミック/ライトノベル/歴史/文芸ほか多数--(電子書籍) コメントを見る
2007年3月から始まっていた最強☆読書生活編集部ブログも2月29日以降更新無し…
最強☆読書生活 編集部ブログ コメントを見る

食糧争奪 - 日本の食が世界から取り残される日

stars 世界的食料危機に備える

ここ最近,原油高に続いて騒がしくなってきた食料高騰について気になっていたので手に取った。書名はあおりが入っているが,内容は市場分析に寄るまじめなもの。

第1章 マルサスの悪魔がやってくる
第2章 飽食の時代とそのわな
第3章 脅かされる大地
第4章 高まる食卓への不安
第5章 立ち遅れるなニッポン

筆者は,前書きで
特に、食料が有限性を帯びてくるなかで,世界では限られた食糧を巡って三つの面での争奪戦が強まる可能性が強い。
第一は国家間の争奪戦。
第二は市場間の争奪
第三は工業部門と農業部門の水と土の争奪戦
と述べており,以下本章で個々の問題について論じている。通じて読んでみるとわかるが,一部の新自由主義者が主張するように,補助金を撤廃したり,輸出規制をやめて市場メカニズムに委ねれば解決する,と言った単純なものではないということ。
特に読むべきは第1章で,食料問題の構造的脆弱性を詳らかにしている。食料問題に関心がある人はここだけでも読んでおくべき。
第5章において日本の農業政策への提言がまとめられているが,遅々として進まない農業改革をみていると…
しかし穀物自給率28%というのはほんと危険な水準だよなあ…

通じてグローバルな視点で食糧問題を論じており,統計等を駆使した説明は説得力が強いが,現場の声が聞こえてこないという点で臨場感に欠けるなあ,とも思った。

hReview by tomozo , 2008/05/26

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食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日
柴田 明夫
日本経済新聞出版社 2007-07

評伝シャア・アズナブル


そう言えば1月に読み終えてなんか書こうと思ってほったらかしになっていた…

上巻では一年戦争からエゥーゴ初期、下巻ではグリプス戦役から第二次ネオジオン戦争が主に書かれている。

シャア・アズナブルと言えば、言わずと知れたジオン・ソム・ダイクンの忘れ形見であり、エゥーゴのクワトロ・バジーナ大尉であり、ネオジオンの総帥である。

しかし、彼がなぜ、ザビ家殺しを決意・決行し、エゥーゴに参加し、そして隕石落としを決行するに至ったか、と言う内面については謎が多い。
本書ではシャアの生い立ちから彼の抱える自負、世界観、コンプレックスを元に行動の一つ一つをひもといていく。何故、ガルマを忙殺したのか、彼にとってララァ・スンとはなんだったのか、アムロ・レイをどのように評価していたのか。
一流の見識を持ちながら、ニュータイプとしては二流である自覚と、周囲から求められるジオン・ソム・ダイクンの忘れ形見というプレッシャー。仮面の下でシャアがどのような心情を隠していたか。

シャアのファンのみならず、ガンダム好きにはお薦め。

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クチコミの技術 広告に頼らない共感型マーケティング

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クチコミの技術 広告に頼らない共感型マーケティング
コグレ マサト
日経BP社 2007-03-29

by G-Tools , 2008/09/08


stars ブログを口コミに活かすには

ネタフル コグレマサト氏×みたいもん! いしたにまさき氏によるブログによる口コミマーケティングの本。合間にONEDARI BOYSの面々によるコラムが挿入されています。
ネタフルコグレ氏の一人称が"Mackie"だった頃から、そして"みたいもん!"のサイト名が"日本全国・見たいもんはみたいぞの会"の頃から、 ONEDARI BOYSがココログで活動してた頃からの読者であるところの俺にとっては、あぁーこんな事あったね、そうそう、これで盛り上がったよねー、といった感じでさらっと読めました。
両ブログをチェックしている人にとっては今まで書かれた事の集大成と言うかまとめ、ブロゴスフィアに疎い人にとってはよい羅針盤になる内容だと思います。

最近ではブロガーを利用したマーケティングと言うのも市民権を得たと言うか、割と普通に行われるようになってきましたが、一方で違和感と言うか、わだかまりを感じるようにもなってきました。とくに、日産スカイラインのブロガー向け発表会などの記事を見るに。それについては後日エントリーを起こそうかな、と思っています。

hReview by tomozo , 2007/3/29

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クチコミの技術 広告に頼らない共感型マーケティング
コグレ マサト いしたに まさき
日経BP社 2007-03-29

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著名ブロガーが明かすクチコミの秘訣 第1回 『クチコミの技術』にまつわるクチコミの手の内 - nikkei BPnet コメントを見る

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Googleブック検索(β)開始

Google Book Searchが"Googleブック検索"として日本向けサービスが開始しました。現在はベータ版です。
Google ブック検索 コメントを見る
Google ブック検索、日本語版がオープン--書籍の全文表示も:マーケティング - CNET Japan コメントを見る
Goolgeが書籍検索サービス「Google ブック検索」の日本語版を提供開始した。このサービスでは、検索キーワードを含む書籍の基本情報や、場合によっては書籍の数ページもしくは全文を閲覧することができる。
日本にて出版社からの書籍提供受付が始まったのが2006年5月11日ですから、1年越しの公開と相成ります。

受付開始時にはグーグルでは、現時点で日本のGoogleブック検索では出版社が登録した書籍のみを検索対象とし、図書館などとの協力予定はないとしている。とのことでしたが、その後、慶應義塾図書館が"Google Books Library Project"が参加。

「Google ブック検索」で福沢諭吉の著作も閲覧可能に コメントを見る
グーグルは6日、「Google Books Library Project」に、慶應義塾図書館がパートナーとして加わったと発表した。同図書館が収蔵する200万冊以上の書籍のうち、著作権の保護期間が切れた約12万冊をデジタル化し、「Google ブック検索」から検索・閲覧できるようにしていく。
その少し前に、国会図書館からこんな報道もありました。
国会図書館、大正時代の図書約15,700冊をネットで公開 コメントを見る
国立国会図書館は、画像データベース「近代デジタルライブラリー」にて、大正時代の図書約15,700冊を7月3日から公開する。利用は無料。
こういった取り組みが個別に乱立するのではなく、GoogleやMicrosoft,Yahoo!等と共通化していけばいいのに、と思います。

それはそれとして、いくつかキーワードで検索してみましたが、まだまだ充実度は低い感は否めません。芥川龍之介や宮沢賢治なんかも訳書(英語)はヒットするのに日本の書籍にヒットしないのは少々寂しい思いがします。

余談ですが、書籍のデジタル化についてはこちらのブログが詳しいです。

bookscanner記 コメントを見る
更新が停止したのが残念でなりません。

SNSの研究 あなたはまだ「マイミク」のことが好き?

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SNSの研究 あなたはまだ「マイミク」のことが好き?
SE編集部
翔泳社 2007-06-14
評価

by G-Tools , 2007/06/21

in-between days - 新刊『SNSの研究』という本が出ます コメントを見る
私が編集を担当した『SNSの研究 あなたはまだ「マイミク」のことが好き?』という本が出ます。
ということでそのあたりをいろいろなひとたちに書いていただきました。ジャーナリストの佐々木俊尚さんとsocialnetworking.jpの原田和英さんと自他共に認めるmixi大好きITライターの田口和裕さんにそれぞれの立場から現在のSNS論というか総論的な長文記事を書いていただいて、それに各論をいくつか織り交ぜてSNSに関係してくるいろんな議論をできるだけ広く押さえられるような本になったんじゃないかなと思います。twitterやモバゲーのほかにもミクシィ疲れとかコミュ乗っ取りといった最近の話題も入ってます。
シナトラ千代子(id:wetfootdog)さんに原稿を頼めた(↑写真参照)ことが嬉しいすぎる!
と言うエントリーを目にして即座に予約しました。19日夜に受け取って、あっという間に読んでしまいました。

stars 実際にソーシャルネットワーク(SNS)に生息している人達の生の声


面白かった、とまず言いたい。サブタイトルから、mixiメインの本かな?と思っていたのですが、最近のVox,Twitter, Tumblrに最近話題のモバゲーまで網羅している。
Part1でジャーナリストの佐々木氏がSNSについてひとくさり、Part2で世界のSNS状況、マーケティング、今流行りのミニブログを論じ、 Part3で様々な論者によるmix論或いは体験記i、part4でmixiでのトラブル(コミュ乗っ取り、個人情報の問題について論じている。
一番面白かったのはPart2かなあ。個人的にmixiにはあまり面白みを感じていないのと、Part4に書かれていることは既にネット上で見聞した内容が殆どだった。逆に原田和英氏による世界のSNSの潮流は個人的にイチ押しなサービスであるMyBlogLogRojoまでカバーしており興味深かった。惜しむらくはRojoのサービス内容が変ってしまい、本書とは異なってしまったことか。執筆から出版までのタイムラグのせいだと思うがここはちょっと残念だった。

また、携帯サービスであるモバゲータウンについては知らないことばかりなので開発者畑村氏の書かれていることがイチイチ驚きで仕方がなかった。携帯小説が既に15万件あり、1日5000件ずつ増え、PVが3000万/日とはもう驚くばかり。
昨今は既存のサービスがこぞって"ソーシャル化"しつつある中、ソーシャルネットワークもどんどん進化・変化していくのだろう。また、ユーザーもかつてのネットのヘビーユーザーからライトユーザーそして携帯族へ拡散する中、そこで成立するコミュニティもどんどん変質していくと思われる。
そう言った過渡期における、ソーシャルネットワークの『生の雰囲気』を感じ取れる、そんな感想を抱いた。

『ソーシャル××』に興味ある人全てにお勧め。
蛇足だがVoxに先駆けてソーシャル的な機能を取り入れているAmebaがちっとも話題にならないのは何でだろう?

hReview by tomozo , 2007/06/21

日本の偽書

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日本の偽書 (文春新書)
藤原 明
文藝春秋 2004-05
評価

by G-Tools , 2007/06/03

端的に言って面白かった。古代史の専門家からは批判もあるようだが。内容はと言えば、Amazon.co.jpからの引用で。
“記紀以前の書”といった荒唐無稽な偽書のたぐいには、意外にも正史には見られぬような精彩のある歴史像が描かれている。超国家主義者と深くかかわる『上記』『竹内文献』、東北幻想が生んだ『東日流外三郡誌』『秀真伝』など、本書では世間を騒がせた「太古文献」と呼ばれる偽書を取り上げ、ただあげつらうのではなく、どのようなメカニズムで人々の興奮を掻き立てて来たのかを検証し、人はなぜ偽書に魅せられるのか、その謎を詳細にさぐる。
単純に偽書を偽書として説明するのみならず、偽書が成立した経緯、それが世に受け入れられる課程を説明しているところが面白い。特に興味をひかれたのは『竹内文献』を巡る第2章。俺が子供頃読んだ本にも「キリストの墓」や東北とユダヤの関わりについて書かれていていつか見に行こうと思っていたわけだが、これが見事に偽史だったとは…!

また、偽書というのは近代の産物だと思っていたが、古くからあるものだなあ、と第三章「記紀」の前史を名のる偽書―『先代旧事本紀』と『先代旧事本紀大成経』(本邦初の史書は『先代旧事本紀』?『古事記』をしのぐ影響力 ほか)を読んで驚いた。

そう言えば、手塚治虫のライフワーク『火の鳥』でも『平家物語』を偽書扱いしてたことを思い出す。

歴史というのは日々書き換えられており、最近では以前の教科書で書かれていたことが大分書き換わっているというネタが良くテレビなどで扱われているが、こういった偽書を巡る「歴史」というのも知っておくと面白いと思った。あと韓国への偏愛溢れる荒山徹氏のファンにもお勧め。

電通の正体

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電通の正体―マスコミ最大のタブー
『週刊金曜日』取材班
金曜日 2006-09

by G-Tools , 2007/05/07

昨今ネットでは「悪者」とか「黒幕」として扱われることが多い電通についてのレポート。割とセンセーショナルに扱われることが多い題材なので眉につば付けて読んでみたけど、割としっかりした内容だった。
  1. 広告業界制覇のカラクリ
  2. テレビを支配するメディアの地主
  3. 公正取引委員会が本格調査に着手した広告業界
  4. 新聞社にも圧力
  5. 葬式から五輪・万博まで
  6. 永田町との深い関係
  7. ブランド人材を買い漁る
  8. 電通前史 テレビと広告に転機はくるのか
  9. 対談 大下英治×佐高信 「小説電通」の作者が語る舞台裏
電通が幅広く『広告』という業務に携わっていることは知っていたが、万博まで絡んでいたとは不勉強で知りませんでした。しかし、唐突にブログを読んでいる吉田望氏の名前が出てきて驚き。

昔から言われている「日本では比較広告は馴染まない」という一種の都市伝説だが、一業種一社制となっていないことがその理由だったか。何となくは知っていたけど。

あと、小泉政権の代名詞『ワンフレーズポリティクス』が電通の発案というのは噴飯ものだと思った。サウンドバイトなんて80年代には確立されていた手法だろうに、何を今更。

いずれにしてもメディアのシフトが始まっている現在、電通も今までのようには行かないだろうし、電通の影響力と言われると、個人的にはぴーんとこないのが正直なところ。元々それほどテレビを見る人ではなかったし、最近じゃCMスキップばかりですし。寧ろ『電通』を祭り上げる人が電通の影響力を増幅してはいないだろうか?と言う感想を抱いた。

岩本太郎ブログ(私の退屈な日常) - 「電通の正体」に出演(?) コメントを見る
それは別に個人的に彼と面識があったからということだけではない。『週刊金曜日』の特集にしても、どうもメディアが電通について取り上げる場合、従来型の「巨悪・電通」「最大のメディアタブー」とかいったステロタイプな図式に落とし込もうとするのだけど、いちおう広告業界誌で記者をやっていた私の経験から言わせてもらえば、その図式で広告業界なり電通を斬るには、既にあきらかに「限界」が見えてしまっているのだ。
実際の広告・広報に携わっている人も同じような感想を持つのではないだろうか。信徒ではなく、"消費者"を相手にしているわけだし、そんな都合よく世の中動かせないよね。

ただ気になるのは、Googleで書籍名で検索をすると、大抵Amazon.co.jpが広告を出しているのに本書では出していないこと。こんなことは『拒否できない日本』以来ですね。もっともYahoo!(と言うかoverture)の方には出していますが。

バグダッド・バーニング

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バグダッド・バーニング―イラク女性の占領下日記
Riverbend リバーベンドプロジェクト
アートン 2004-07

by G-Tools , 2007/05/07


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いま、イラクを生きる―バグダッド・バーニング〈2〉
リバーベンド
アートン 2006-07

by G-Tools , 2007/05/07

イラクブロガーの一人リバーベンドのブログを書籍化したもの。イラク在住の女性の日常が淡々と綴られている。親族が誘拐されたり、近所の人が行方不明になったり、 命がけで買い物をしたり、ジーンズで出歩いて不愉快な思いをしたり、近所で爆発が起きたり……

サラーム・パックス同様あくまで一人のイラク人の視点であり、彼女の書くことが全て正しいとは思わないが、米軍占領下で人々がどのような思いを抱いて生活をしているか考える良い資料ではないだろうか。

特に上から目線でイラク情勢にふかしをかますブロガーとかに読んでもらいたいと思った。

バグダッド・バーニング(日本語訳)

Baghdad Burning コメントを見る

翻訳者のサイト

日めくり コメントを見る

関連エントリー

Future is mild:イラク戦争前後のバグダッド生活を綴ったブログが映画化
Future is mild:サラーム・パックス―バグダッドからの日記

本能はどこまで本能か - ヒトと動物の行動の起源

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本能はどこまで本能か―ヒトと動物の行動の起源
Mark S. Blumberg 塩原 通緒
早川書房 2006-11
評価

by G-Tools , 2007/04/26

「本能はどこまで本能か―ヒトと動物の行動の起源」マーク・S. ブランバーグ - 好むと好まざるとにかかわらず - 楽天ブログ(Blog)
アンチ疑似科学な貴方は是非読んだほうがいいと思うよ。あ、ページが勝手にめくれちゃうから鼻息抑えてからのほうがいいと思うけどw
ここまで煽られたら疑似科学大好きな俺は読むしかないと思って手にした一冊。 結論から言うと、買え(命令形)。

生物学の本でこんなに目から鱗が落ちたのは久しぶりだ。いつ以来だろう?

敵は本能にあり、と書いたのはキムミョンガン氏だが、この本は"本能"と言う言葉に対して根本的な疑義を挟んでいる。多くの人は割と気安く「本能」という言葉を使うと思うが、果たして本能とは何なのか?

本能という言葉の変遷をプラトンの昔から現在の動物行動学者や進化心理学者までの「本能」を取扱を上げた後、後半でそれらを一つ一つ実証していく。また、併せて創造説或いは最近流行のインテリジェント・デザイン論もばっさり。

例えば、生物に固有の生得性……ほ乳類の新生児が生まれてすぐ母親の乳を求める行動などをみると、生まれつきそう言う行動をするように出来ているように思ってしまう。 しかし、それは本当に「生まれつき」なのだろうか?

そう言った俗説を丹念に実験を繰り返すことによって覆された事例が多々上げられている。いやもう頁をめくるたびに目から鱗が落ちましたよ。まさか、「喉が渇いたら水を飲む」と言う行動すら本能に由来するものではなかったとは…!

重要なのは、“動物が隔離されているか”ではなく、“何から隔離されているか”だ。
ホント、これ重要なんだなあと。

一時期は遺伝子決定論というものが流行って、ヒトゲノム・プロジェクトが完遂した暁には人類のことなど全て分かるかのようにいわれたが、結局分かったのは遺伝子だけが特権的な地位にいるわけではないと言うことだった。

読み進めるうちに、何が生得的なものなのか、何が後天的なものなのか、それを区分けすることが如何に難しいか分かる。
うまくまとまらないのだが、発達・遺伝・学習等の諸々についてちゃんと読みたい人にはお薦めの一冊。

未だにこういうことを書く疑似科学大好きな人には是非読んでもらいたいと思った。
池田信夫 blog 人類史のなかの定住革命 コメントを見る
1万年ぐらいの間では遺伝的な変化はほとんどないので、われわれの本能は遊動時代のノマド的な生活に適応していると考えられる。しかし1万年間の定住生活によって、農業・漁業に適応した文化が形成された。この遊動的本能と定住的文化の葛藤が、人間社会の根底にある。
あと、本書の評判を知ろうと検索をかけたところ余り言及がなかったので是非とも小飼弾氏橋本大也氏には読んでもらいたいと思った。

お勧め書評

進化心理学に疑問を抱く皆様に朗報です、実証研究に基づいた考察本が出ました! - 蒼龍のタワゴト-評論、哲学、認知科学- コメントを見る
『本能はどこまで本能か』 コメントを見る

嫌老社会

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嫌老社会 老いを拒絶する時代
長沼 行太郎
ソフトバンククリエイティブ 2006-09-16
評価

by G-Tools , 2007/04/25

小飼弾氏のレビューを読んで興味を持った一冊。
404 Blog Not Found:嫌老社会 コメントを見る
結論から言う。
老いる可能性のある人々、すなわち全ての人々は今すぐ予約注文すべきである。
本書は"老い"とは何か?をテーマに、"老人"とは何か?歴史的にどのようなイメージの変遷があったか、医療の発達した現在に於いて"老人"であるとはどういうことか縦横に論じている。言わば、"老いってこういうことだったのか"新書。"高齢者=弱者"と言うステレオタイプな見方は既に陳腐化しているのはその通りだよなあと思う。また、アンチエイジングに代表される"老いへの抵抗"についての考え方も興味深い。特に現役(ファーストライフ)→引退(セカンドライフ)→病気などで自由が利かなくなる(サードライフ)と言う考え方は、2007年のセカンドライフバブルに対する痛烈な一差しと言えまいか。

俺自身、"老い"に対して明確な現実を認識しているか、と言われると両親が健在な現在はまだまだ甘いよな、と思う。だが、いずれは直面する問題として自分自身と親しい人の"老い"について考えなければならない。

その為に本書は良い手引書となるんでは、と思う。

最後に、ライター速水健朗氏による著者へのインタビューを紹介。

コラム≫IT戦略/ソリューション-【長沼行太郎氏インタビュー】老いる社会と向き合うために:ソフトバンク ビジネス+IT コメントを見る

牡蠣礼讃

(ogijun)のあとで書く日記を読んで興味を持った一冊。
(ogijunの)あとで書く日記 - 畠山重篤『牡蠣礼讃』 コメントを見る
とにかくオススメです。これ、読むと強烈に殻付き生牡蠣食べたくなってくるんですけど..。ノロなんか知らん。安くなってるらしいから食べに行きたいなあ。

stars

読んでみて本当に面白かった。もう筆者: 畠山重篤氏の牡蠣愛の凄さに圧倒される。

第一章では牡蠣養殖の一年を描き、第二章で牡蠣養殖の歴史を、第三章で世界の牡蠣養殖業者、フランス・ラングドック、アメリカ・シアトル、熊本有明、、中国・沙井、オーストラリア・タスマニアを訪れ、不思議な縁に驚き、第四章で蛎殻について。

第二章で描かれる牡蠣養殖の歴史に潜む先人達の労苦には頭が下がる。牡蠣なんかの貝類はそんなに動き回るわけでもなし、割と簡単に養殖できるものかと思っていたのだけど飛んでもなかった。

世界中の牡蠣生産地を訪れる第三章も面白い。筆者の人柄によるものか単に運がいいのか、行き当たりばったりに見えて不思議と核へと触れるのは一種の才か?個人的には娘さんや結婚のなれ初め、恩師との再開を含むシアトル紀行が一番面白かった。
牡蠣養殖と言う全く知らない分野についての本ではあるが、だれることなく一気に読めたのは筆者の専門知識の豊富さと語り口の上手さだろう。学者やジャーナリストではこうはいくまい。

実は俺はあまり牡蠣が好きではない。妻は牡蠣好きで飲みに行ってはよく生牡蛎を注文しているんだけど、俺自身はあまり食べてなかったのだけど、これ読んだ後はもう牡蠣が食べたくてたまらなくなった。(結局食べなかったけど。)

hReview by tomozo , 2008/05/30

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牡蠣礼讃 (文春新書)
畠山 重篤
文藝春秋 2006-11

ヒューマン2.0 - web新時代の働き方(かもしれない)

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ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)
渡辺 千賀
朝日新聞社 2006-12-08

by G-Tools , 2007/04/13

繁忙期に読んだにもかかわらず、さくさく読み終えました。実質2,3時間で読んだかな?筆者の渡辺千賀氏のブログそのままなので軽く読めるだろう。

本書の趣旨は日本の(主流)の働き方とは異なる、シリコンバレー流の働き方があるよ!と言うことで、フリーランスや、チャンクワーカー等の働き方などを紹介している。構えることなくこういう世界もあるんだ、ぐらいで軽く読み流せばいいんじゃないだろうか。(その辺をわきまえずに文句言っているアマゾンの書評にはげんなりする。)

最後の方にシリコンバレーに向いている人、と言うのがあり、俺はほとんど当てはまるのだが、ただ一つシリコンバレーで通用するスキルがないのが残念と思った。

ガイアの復讐

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ガイアの復讐
ジェームズ ラブロック James Lovelock 竹村 健一
中央公論新社 2006-10

by G-Tools , 2007/01/28

この本は危険だ。非常に危険なことをさらりと述べている。

人間よりもガイアが重要だ、と言うことが再三主張され、大気中の温暖化ガスの濃度が適切な温度を保てる閾値を越えたもしくは越えつつあると警告する。持続可能な成長や再生可能なエネルギーと言うのは馬鹿げた主張で、もっとも効果的な対策は原子力エネルギーの活用だと。

ラブロックの主張はまずガイアがあってこその人類であり、その対策こそが急務だ、と言うことだが、この理屈って環境ファシズムに利用されそうだなあ。

あと、再生可能なエネルギーに言及する際、現在のトレンドを無視したことを記述しているのは意図的なものなんだろうか。それとも単純に知らないだけだろうか。

本書を通読して思ったのは、ラブロックの主張が第二次ネオ・ジオン戦争におけるシャア・アズナブルの主張と似通っていること。
「地球が持たん時が来ているのだ」
「地球に残っている連中は地球を汚染しているだけの、重力に魂を縛られている人々だ」
「世界は、人間のエゴ全部は飲み込めやしない」
「人間の知恵はそんなもんだって乗り越えられる」
「…ならば、今すぐ愚民どもすべてに温暖化ガスを削減する英知を授けてみせろ」
「地球上に残った人類などは、地上の蚤だという事がなぜわからんのだ?」
「結局、遅かれ早かれこんな悲しみだけが広がって地球を押しつぶすのだ。ならば人類は、自分の手で自分を裁いて自然に対し、地球に対して贖罪しなければならん。」
ところでラブロックが原発を推進するのは実は温暖化ガスを排出しないエネルギーとしてではなく、チェルノブイリ効果を狙っているのではないだろうか。
Rauru Blog 》 Blog Archive 》 チェルノブイリが野生生物の楽園に コメントを見る
さらにこの記事の終り近くでは、ガイア仮説で知られる James Lovelock が、興味深いことを語っている。曰く、「若干の核廃棄物を熱帯雨林の中に置いておけば、人が近付かなくなるので、熱帯雨林の自然も復活するのではないか」だそうだ。
「それで、地球を潰すんですか?」
「潰しはしない。地球にはちょっと休んでもらうのさ」
本書の中にあっても全く違和感のないセリフだ。

と言うことで、本書のタイトルは「逆襲のガイア」にすべきだったのではないだろうか。

参考リンク

ラブロックの温暖化手遅れ説についてあなたもコメントを コメントを見る

タイアップの歌謡史

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タイアップの歌謡史
速水 健朗
洋泉社 2007-01
評価

by G-Tools , 2007/01/25

人気ライター/ブロガーである速水健朗氏の初単著。予め書いておきますが、俺は速水健朗史氏のファンのため、感想には強烈なバイアスがかかっていると思います。

結論から言うと、非常に面白く、また同時に蒙が啓ける内容だった。

本書は音楽産業が産業として立ち上がった時期から始まる。驚いたことにその時には既に今でいうタイアップが始まっていたという。タイアップというと80〜90年代辺りと思いこんでいた俺には既に驚きだった。テレビに出ない歌手についても迎合しない、と言うポリシーだと思いこんでいたが、ラジオ・テレビの競合があったとは思いもよりませんでした。

この本の面白いところは、人によっては風俗史だったり、メディア史だったりと音楽とタイアップというフィルターを通して様々なものが浮かび上がる点だ。個人的には時代を経る毎に洗練されていくその手法に舌を巻いた。

凡人にありがちなことだけども俺はタイアップというのは"広告代理店がレコード会社と組んでウッシッシ"と言うタイアップは悪いよ史観を持っていたのですが、その裏側では御大といえどもダメ出しを食らう厳しい世界があってこそのヒットだったと知って更に驚き。特に"ラブ・ストーリーは突然に"の詞にあんな意味が潜んでいたなんて。 読後、浅薄な史観はあっさりと覆されてしまいました。

満足度は高いが、不満がないわけではない。
全体に事実を淡々と記述している感が強く、ブログで見られる五反田節(と勝手に俺が呼んでいる氏独特の文章のリズム)が影を潜めている点。例えばコラムという形で納められなかっただろうか。せめて川嶋あいについては。。また、膨大な資料を一冊に押し込めているため、どうしても一つ一つのエピソードが圧縮されている感が否めない。
出来うることなら、いつか"タイアップの物語"と言う形で15巻ぐらいでDVD付きで出してくれないだろうか。

あと、これは氏のブログを読んでいる人にしか分からないだろけど、あのときのエントリーはこれとつながっていたのか、と言うのを読み取るのも面白かった。

不思議なのは多くのブログで取り上げられているにもかかわらず、未だにAmazon.co.jpのレビューがないこと。何でだろう?

関連リンク

【A面】犬にかぶらせろ! コメントを見る
【B面】犬にかぶらせろ! コメントを見る
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グーグル八分とは何か

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グーグル八分とは何か
吉本 敏洋
九天社 2006-12
評価

by G-Tools , 2007/01/06

悪徳商法?マニアックス(通称悪マニ)管理人として知られるBeyond氏による、Googleによる"検閲"について書かれた一冊。正月用に購入したのだが、読み始めたら止まらなくて一気に読み切ってしまいました。

本書では、グーグルが一方的に情報を遮断する事例が幾つも出てきます。筆者自身がグーグル八分に遭っているだけに細部まで踏み込んでいます。
もっとも、多くは既にネット上で語られており、Beyond氏のサイトをチェックしていれば、多くは既知の事例だとは思いますが。
取り上げられている事例は、
  • ウェディング問題
  • グロービートジャパン(ラーメン花月)
  • 大東建託
  • アラキ工務店
  • フリーライター山岡俊介氏
  • 迷惑メール撲滅私的調査委員会
  • アスキー
  • ガルエージェンシー(探偵ファイル)
  • 朝日新聞社
ちなみに、俺はウェディング、グロービートジャパン、山岡俊介氏、朝日新聞の件は知っていましたが、後は初見でした。何がBeyond氏のサイトをチェックしていれば、多くは既知の事例だとは思いますがだ!

本書では第1章で、グーグルの歩みとグーグル八分について。第2章でグロービートジャパンについて。第3章で上記で挙げた様々なグーグル八分の事例の紹介、第4章でグーグル八分について弁護士の山口氏と「図書館の自由委員会」副委員長西河内氏へのインタビュー(と言うか対談に近い)、第5章で総括と言う構成になっています。

さて、Googleは自社の方針について以下のように述べています。
Google: ヘルプ センター
ウェブ検索ヘルプ > Google について > Google の方針
検索結果を検閲していますか。
ポリシーと方針 : Google と検閲 - ヘルプ センター コメントを見る
Google の方針として、検索結果に対する検閲は行いません。しかしながら、各国の法律、条例、政策の求めに応じ、これを行うことがあります。このような理由で、ある検索結果を削除する場合は、該当する検索結果のページに告知します。
これは事業を営む上で避けられない事項だと思いますが、問題はその方法でしょう。Beyond氏も本書に於いて、そのように指摘しています。本書によれば、グーグルは当事者の一方からの申請に基づき、告知なしに検索結果からの削除を行なっているとのことです。両者の言い分を聞いた上で判断すると言った手続きは一切無いそうです。 これが如何に恐ろしいことか。
グーグル(や他の検索サイト)の検索結果に表示されないサイトがどれぐらいの人に認識されるのだろうか。

グーグルは既に"サーチエコノミー"と称される経済圏を構築しつつあり、今後更に拡大していく見込みです。
グーグル八分が致し方ないとしても手続きの透明性や基準の明朗さが必要だと思います。本書に上げられているようなやり口では、グーグルにとってもマイナスの効果か得られないのではないでしょうか。
個人的には情報大航海プロジェクトなんかに大金つぎ込むよりも、そう言った紛争解決に寄与してもらいたいと思っています。本書でもそう言う話題が上がっています(第4章)が、国家による規制には否定的な意見です。本来であれば、検索業界が連合して紛争手続きの基準、手順を定めて運用していけばいいと思うのですが期待は出来ないな、と感じています。

本書はそう言う思いを抱いている人には必読ではないだろうか。

ちょいと不満を上げれば、グロービートジャパンの事例に踏み込みすぎな点と、グーグルウェブマスターツールについて触れられていない点か。

ITmedia Biz.ID:Google Sitemapsに“Google八分”通知機能 コメントを見る
刷新版のSitemapsは、ポリシー違反でWebサイトが検索インデックスから削除された場合にオーナーに通知し、インデックスへの復帰を要求するフォームも提供する。
ITmediaの言ういわゆる「Google八分」って本書で問題視しているグーグル八分と若干異なるようですが。

あと、Beyond氏こと吉本敏洋氏が同じ歳だと知って驚きました。

関連サイト

悪徳商法?マニアックス
グーグル八分対策センター : Centers of against for Google censorship

関連エントリー

Future is mild:ザ・サーチ/グーグルが世界を変えた
Future is mild:グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する
Future is mild:国産検索エンジンより必要なもの
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