stars とにかく、一度読むことをお勧めする

素晴らしい本である。なんで今までこの本を読まなかったのか・・・・悔やまれる。ベストセラーになった"チーズはうんたら"と言うくその役にも立たないおとぎ話の数億倍役に立つ内容と言えよう。良く、読まないと損だと言うキャッチコピーがあるが、この本こそまさしく当てはまる。と言うか、俺は損した気分だ。
本稿は2000年に刊行され、2001年に増補改訂版として出版されたもの。俺が読んだのは増補改訂版。
内容は、何故多くの優良企業が転落していったのか?"技術革新"に付いていけず市場から去っていったのか?或いは滅んだのか、と言うことに対する疑問に対する解が提供される。通説では、"経営者が間抜けだった""市場の声に耳を傾けなかったから""傲慢だったから""技術革新を怠ったから"等と言う理由が述べられるが、豊富な事例の研究により、それが間違いであることが裏付けられる。

優秀で、顧客の声に耳を傾け、顧客の求めるものを提供し続けたせいだ
と、この研究は結論づける。

優秀な先駆者達が主流顧客向けに"持続的イノベーション"を続けている間に、廉価でシンプルな"破壊的イノベーション"が登場し、新しい市場を見つけやがて上位の市場を侵食する。
優秀な企業は、もちろんその技術に対応することは可能だったし、その技術を使った製品を作り上げていたにも関わらず、その技術を販売することが出来なかったため、"破壊的なイノベーター"に席を譲る羽目になった。
そんな馬鹿な、と思う向きもあるだろうが、クリステン教授はその理由も明らかにしている。
つまり、企業はその顧客を頂点とした"バリュー・ネットワーク"の一部であり、リソースは実は顧客によって分配されている、と言うこともつまびらかにしている。

クリステン教授は、"破壊的技術" に上手く適応した事例も紹介している。
まず、破壊的技術は大企業に向かない。なぜなら最初に得られる利益が大企業の成長に必要なほど大きくはないから。よって、企業からスピンアウトした別組織で行うか、主流の組織の影響を受けない別の独立した事業体を立ち上げることを推奨している。
また、最初にリソースを使い切らない点も大事だ。破壊的イノベーションが求められる市場は不明確で、トライ&エラーを繰り返し、必要に応じて軌道修正を行わなければならないから。
上記のようなことが、豊富な事例と明瞭な理論によって述べられており、非常に納得のいくというか、目からうろこが落ちると言うか、思考のパラダイムシフトと言おうか、蒙が啓かれると言おうか、とにかく素晴らしい本であるとしか言えない。2001年刊行にも関わらず、現在にも当てはまる事例には事欠かない。読み進めているうちに、色々な企業・製品が頭に浮かんだ。

とにかく、一度読むことをお勧めする。

余談だが、CNET Japanにクリステン教授のインタビューが載っていたのでリンク。

イノベーションのジレンマに陥る優良企業たち:インタビュー - CNET Japan コメントを見る

hReview by tomozo , 2008/06/02

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イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
クレイトン・クリステンセン 玉田 俊平太 伊豆原 弓
翔泳社 2001-07