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マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫)
中山 宥
ランダムハウス講談社 2006-03-02

by G-Tools , 2008/05/30


stars 何故アスレチックスは勝ち続けることが出来るのか?

貧乏球団にも関わらず、スター軍団N.Y.ヤンキースを向こうにプレーオフへ進出し続けるオークランド・アスレチックス。その秘密に迫ったのが本書。

面白かった!野球好きの人には是非読んでもらいたい。

本書の中心となるのは、アスレチックスのGM、ビリー・ビーン。かつて、将来を嘱望された才能溢れる若者であったが、挫折し、メジャーリーガーとなり得なかった男。(メジャーへの出場経験はある)

このビリー・ビーンを中心に、彼が集めた一風変った選手の活躍と挫折を描いている。
では、何故アスレチックスは勝ち続けることが出来るのか?

それは彼らが従来の"勘"や"経験"に基づくやり方を否定し、"数学"を持ち込んだから。例えば、打者の成績は"打率"、"打点"、"本塁打"だ語られるのが通例だ。だが、それを否定し、本当に重要視すべきは"出塁率"と言うことを、データから導き出し、それに基づき選手の獲得を行っている。

また、盗塁やエンドランなど監督の自己満足と否定し、決してそれを許さない。

過去のデータに基づき、ドラフトでは大学生選手しか獲得しない。しかも、目のつけ所が違うので、他球団の様に巨額の契約金を用意せずに選手を獲得することが出来る。トレードも然り。選考のさま、ドラフト直前までの駆け引きのシーンはは読んでいてハラハラする。

そうやって獲得した個性的な選手の活躍する様と言うのはそれだけで一つの物語として面白かった。特に、肩を壊して戦力外通告を受けた捕手がアスレチックスで一塁手として成功する話、敬けんなキリスト教徒のサブマリンの投手、そして冒頭のドラフトのシーンで、ベテランスカウト勢の反対を押し切って獲得した他球団が全く顧みなかった"でぶの捕手"の活躍。この3人の物語は心に残った。

データを徹底的に重視し、勝つための要素を抽出し、それに基づき投資を行う。

この、一般企業では当たり前に行われていることを最初に実行したメジャー球団がアスレチックス。日本でも一時期"ID野球"なんてものがもてはやされたが、それとは全く異なるデータ重視野球。

ちなみに、これは"セイバーメトリクス"と呼ばれている学問だ。

この本の内容が、そのまま日本野球に適用できるわけではないが、非常に参考になるだろう。是非、楽天イーグルスに読んでもらいたい、と思うのは俺だけじゃないだろう。

本書は、決して単なる野球ドラマでも無いし、単なる経営書でも無い。野球好きの人なら、是非一度読んでもらいたい。

なお、本書の最後で書かれていた、ビリー・ビーンを獲得しようとしたレッドソックスが、昨年"ベーブ・ルースの呪い"を打ち破り、ワールドシリーズを獲得したのは知られている通り。また、ビリー・ビーンの部下、ポール・デポデスタをGMに迎えたL.A.ドジャーズは見事地区優勝を果たしている。アスレチックスは故障者の続出でプレーオフ進出を逃したが。

hReview by tomozo , 2005/07/25

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マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫)
中山 宥
ランダムハウス講談社 2006-03-02
2004年MLB順位表
MAJOR.JP | SEASON REVIEW 2004:アスレチックス
昨季まで4年連続のポストシーズン進出を果たしていたアスレチックス。しかし今季は主力の故障と球界最高と称される先発3本柱の不調から思わぬ苦戦を強いられ、最後はシーズン161試合目でエンゼルスにとどめを刺されるという結果に終わった。